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■ 転がり落ちた「え?」
=転がり落ちた「え?」=
コンビニのバイトを終えて、引き継ぎの女の子に挨拶をして帰る。「おつかれさま」唐突に、ボクは年老いていったとき、紳士よりも変なおじちゃんになっていたいと思った。アル中間際で、赤ら顔で、笑顔がチャーミングなおじちゃんになっていたいと思ってる。でも、きっとボクは「紳士」になるだろう。変なおじちゃんになりきれない、中途半端な紳士になっているのだろう。しわくちゃな千円札を自販機に入れ、キャメルのライトを三つ買う。二つ目の箱が落ちてきたときようやくボクは女の子のことを思い出す。三つ目の箱が落ちてきたとき、明日はクリスマスイヴだと言うことを思い出す。彼女は五時くらいには帰ってくる。きっと、「従姉妹が家出してきて…」なんて言っても彼女は信じない。なぜならボクの両親が二人とも一人っ子だと言うことを知っているからだ。ボクの妹はいるにしても、彼女は妹の顔を知っている。なんと言おうか、なんて考えるのをやめることにした。 家に帰り着くと、女の子は彼女のスウェットを着て、猫に餌をやっていた。「おかえりなさい」「ただいま」そうして、ようやくボクはそこに思い至る。「彼女の妹ではないのか?」ただ、ボクは彼女の妹の話を聞いたことがなかった。 「もしかしてさ」 女の子に向き合い、そう言葉を放つと、女の子は猫のことをぬいぐるみを抱きかかえるかのように胸に抱いて、視線を遠くへずらす。 「もしかして、君はユリの妹じゃないのかな?」 猫が、ミャア、と鳴いた。 「違う? 勘違いだったらゴメンね」 さて、どうしてユリの妹がここにいて、ユリはここにいないのだろう? 時計の針は、三時半を少し回ったところをさしている。猫がもう一度、みゃあ、と鳴いた。 「お姉ちゃん、しばらく帰ってこないよ」 「え?」 とりあえず、ボクのこぼす言葉は目の前にばっか転がり落ちる。
2004年12月23日(木)
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