カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 行き着かないもの

=行き着かないもの=

もやもやしたものが胸の中にたまっていき、あふれ出てきたっていいだろうに、全然胸の中でふくらむばっかりで息苦しさ。ため息をつきたくなる。ため息はあふれ出してくる。立っているのが辛くなる。考えるのが熱を帯びてくる。くる。くる。くる。何かを求めている。確かに何かを求めている。いる。いる。いる。ふぅ。ため息の音。震え出す。ふる。疲労物質の根元。根本の先。ふるふる。大きく息を吸い込んだら、大蛇が出てくる。眠りがさめようとする。今日も眠ろう。言葉の爆発。なかなか連なっていかない。言葉の爆、発。発。発。はああー。痴呆の音色。くる、くる、狂ってく。いる、いる、イルミネーション?違うよ。言、葉、の、爆、発。


=迷界=

向こう側から鳴き声が聞こえた。耳に響く、脳へと突き刺さる甲高い鳴き声。深い深い霧の中。濃霧の、生暖かさ。踏み付けた小枝が大きな音を鳴らして、後ずさりさせる。前に進もう。いや、木に印を付けよう。迷わないように。


=けむり=

濡らさないようにしながら胸の深さまで浸かるように、ゆっくりと沖へと出ていった。あばらのあたり、足、背中が心細い。黒いだけで、底も、先も、何も見えない。空には月。と、星。かすかに鏡に映る月。ゆらゆら揺れている。少し冷たい水。少し涼しい風。季節は冬のはずなのに、だ。遠くに砂浜と、たき火の焔が見える。暖かい団欒と、俺は少し、今、離れた位置にいる。タバコの煙を吸い込んだ。胸にいっぱいにして、空へと優しく吐き出した。水に溶ける塩のように揺れる。左手にたどたどしく握られたタバコから煙が上っていく。風に揺られながら、ゆら、ゆら、ふら。ぴたりと風が止む。すうーっと、立ち上った。魂はこれで空に帰れると想う。やっと。
たき火の炎にむかって手を合わせた。最後の一口。



2004年02月26日(木)
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