カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 タばコ

 ふと、その瞬間。自分が周りの時間に置いて行かれてしまっているのではないかと恐くなる。僕の意識していない間に時間が何年も進み、僕以外の人達は3年後の世界を普通に生きていて。
 震える煙草を唇に挟んで、震える炎で火を付ける。一息吸って、体内にタールの回るイメージを。血管が収縮する。中枢神経が麻痺し、鳥肌が走る。足下が揺れる。吐き出した息の中から、一酸化炭素をより分ける作業。目閉じる。
 目を開く。ここはどこでもない。こうして、自分は取り残されていくのだろうと。
 ドロップアウト。

2003年06月06日(金)
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