カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 シナビタきのコ

=シナビタきのコ=

「でも君は結局頑張ろうなんて思わないんだろう?」
自分で「しまった」と思うよりも早く、彼はシュンと萎びてしまった。
「ああ、そうかも」
トーンダウンした声に、細められ、潤んだ瞳。顔は下を向いて、影ができてる。
張りぼての鎧をつけたハリネズミ。繊細で、無邪気で、おしゃべりで、臆病で、弱い。
喋ってないと、押し潰されてしまうんだ。

=何かを待ってる=

霧が晴れた後、目の前に暖かい街が広がっているのを無意識裏に願ってて、壊れきった廃墟の街を目にしたとき、淡い期待は裏切られる。
例えそれが、自分で壊した現実であっても。

=終曲時間=

彼女が音も、波さえも立てずに沈んでいく。等身大のマネキンがゆっくり沈んでいくように、もがかず、息を吐かず、表情を変えない。彼女の顔は、次第に碧味がかかってきて、いつの間にか消えている。
何もない湖面のどこに視線を置けばいいのか、迷っている。



2002年04月09日(火)
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