『愛し君へ』

(大変失礼ながら)見る予定はなかったのですが、何となく第1話を見たところ、最初から最後まで嗚咽しまくり…という困った状況に(苦笑)。

ドラマの中で、俊介(藤木直人さん)が四季(菅野美穂さん)にカツ丼を食べないか…と誘うシーンがありました。
カツ丼…と聞いて頭に浮かぶのは、吉本ばななさんのデビュー作『キッチン』に収録されている「満月−キッチン2」。
大切な人を失った後、疲れきった主人公が知らない町のたまたま入ったお店で食べたカツ丼。あまりのおいしさに主人公は、満月の夜道をタクシーを飛ばし、同じ寂しさを共有している人にカツ丼を出前してあげる…。
その部分の描写は、どんなお料理本の写真よりも食欲をそそります。本を読むのはたいてい夜なので、そのたび今すぐにでもカツ丼を食べたい衝動と闘わなくてはなりません。

今回のドラマで俊介がカツ丼にこだわる理由は、亡くなった弟さんとの果たせなかった約束があったから。
事情を知った四季と一緒にカツ丼を食べるシーンでは、俊介が弟さんの分も注文して、二人で座ったテーブルに丼が三つ並んでいるのが泣けました。
カツ丼という、元気なときでも一杯食べきるには結構パワーのいる食べ物を、気持ちの疲れきった人たちが食べようとする。
それを傍から見ているのは切なくて…、だけど人の持つ底力のようなものに、こっちが励まされてしまいます。
生きてゆくということは、もしかするとこれくらいシンプルなことなのかもしれない…とハッとさせられて。
2004年04月19日(月)

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