『くちぶえ番長』 重松清 (新潮文庫) - 2007年09月25日(火) 重松 清 / 新潮社(2007/06) Amazonランキング:1090位 Amazonおすすめ度: あの頃を思い出しました 童心にかえる一冊 お見事 やられました <児童文学なれど、大人も学べる勧善懲悪小説> 雑誌「小学四年生」に連載したものに、書下ろしを加えた、文庫オリジナル作品。 主人公のツヨシは少し気が弱く優等生タイプの少年で、作者の重松さんを想像して読まれたらいいのではないであろうか。 読み終えてまず感じたことは、はたして、自分達の子供の頃は現代作家でこのような優しい語り口で読者を迎え入れて来れた作家ていたのであろうかということ。 本作が“新潮文庫の100冊”に選ばれたのも凄くタイムリーであり、文字通り、国民的作家・重松清さんの面目躍如といった作品であると言えよう。 願わくば、国語の教科書に掲載して少しでも授業が楽しく・そして実践的なものになるようにしてもらいたいものである。 というのは、今までいろんな本を読んできたが、本作ほど親子で同時に読んで語り合える作品に出会ったことがないのである。 もちろん、文庫化に際して少なからず大人をターゲットとした作品に仕上げているのも事実であるが、反抗期に入る直前の年代だからこそ親子水入らずで読んで語り合って欲しいなと思うのである。 転校生のマコトという女の子が素晴らしい。 トレードマークがちょんまげ、スポーツ万能で正義感あふれる性格、おまけにくちぶえと一輪車が得意である。 読んでいて本当に心が和めるのは、マコトがやはり徐々にクラスの中に溶け込んでいく過程だろう。 そして徐々に友情だけでなくって淡い恋心も抱いてくる2人なのであるが、寂しい別れ→転校が待ちわびているのである。 マコトに強い影響を受け、そして凄く成長するツヨシくん。 まるで今、作家として頑張れているのもあの時のマコトのおかげだと言わんが如く。 人間別れがあるから成長するのであろう。 本作の大きな背景として、マコトの亡き父とツヨシの父とが昔親友同志だったという点があげられる。 私達、大人の読者は離れ離れになってもお互い元気で頑張っているであろうということを励みにして生きていることであろう。 たとえ別れても、2人の気持ちは永遠である。 そう、辛くとも、同じ空の下で生きているのであるから。 最後はほろっと来た人、それは重松ファンの証だと言えそうですね。 この作品は掲載雑誌からして作者の願いが詰まっている。 それはやはり子供たちに“真っ直ぐ素直に育って欲しい”という願いである。 本となって出版された今、少しでもその作者の願いを子供たちに伝えたいとひとりの重松ファンとして思ったりするのである。 重松作品の中での位置づけに関して述べさせていただくと、本作は重くなくって爽快な作品の部類だと断言できる。 重松氏自身、重すぎるというイメージが払拭できずに、決して万人受けする作家というイメージでは捉えられてないのであろうが、本作はそのイメージを覆す重松入門作品として書かれたと言っても過言ではない。 老若男女楽しめ、かつ涙することが出来るのである。 確実に言えるのは、私達大人の読者がほろりと来た以上に、子供たちの心を揺さぶることが出来ることであろう。 子供たちの心を育む恰好の1冊であると声を大にして叫びたいなと思ったりする。 大人の読者としての受け止め方を記したい。 まず、自分達がいろいろな想い出を思い起こさせてくれ童心に戻れたことを重松さんに感謝したい。 だけど、もっと肝要なことは子供たちの想い出をもっと大切にしてあげることである。 面白い(8) ...
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