『凸凹デイズ』 山本幸久 (文藝春秋) - 2006年09月07日(木) 山本 幸久 / 文藝春秋(2005/10/25) Amazonランキング:位 Amazonおすすめ度: コミカルな会話が楽しい 一生懸命ってちょっとカッコいいじゃん、と思える1冊 <自分自身の輝ける居場所探しに恰好の1冊> 個人的な意見であるが、これから次世代の直木賞を狙える男性作家として本作の山本幸久さんと三羽省吾さんのお二人を注目している。 お2人とも今後のエンタメ小説界を背負って立つに相応しい逸材だと信じて疑わない。 本作は山本さんのいいところがギュッと詰まった傑作だと言えそうだ。 作者のいいところは次の2点あたりがあげれるだろう。 まず作風がとってもハートウォーミングな点。 次に登場人物が皆個性的でキャラが立っている点。 本作は上記2点が巧みにミックスされ、“山本ワールド”を見事に構築させた作品である。 凹組はとある小さなデザイン会社。 どんな小さな仕事も引き受けている。 過去(10年前)も今も男性2人と女性1人で運営している。 名前の由来がユーモラスで面白いのであるが、男性は努力型の大滝と天才肌の黒川。この2人は不動のメンバー。 女性は変動していて過去は現在ライバル会社QQQを経営している醐宮、現在は物語の語り手をも担っている凪海(なみ)。 物語は現在をデビゾーとオニノスケの作者でもある凪海が語るパートと、凹組結成のいきさつが語られる過去のパートとが交互に描かれている。 この作品を読んでもっとも巧いなと感心したのは、作者の醐宮というキャラの描き方である。 初期の凹組の中では紅一点ながら一番の野心家で、事務所を飛び出して独立したいきさつがある。 取りようによったら裏切り者的な要素も合わせ持つ彼女であるが、実はそういう側面的な思考は排除しなくてはならない。 とにかく山本さんが描くと憎めないのである。 結果としてだが、彼女は凹組の男性2人では到底掴めない才能を得るために一旦離れたのである。 そして取りようによっては憐れではあるが、大きく成長した姿で戻ってきたのである。 凪海が醐宮の会社QQQに出向して、彼女に近づいていろんな点を学んで成長していく姿が印象的だ。 そこで終始見極めれ、醐宮の凹組復帰を推薦した凪海、物語を通して一番成長したのはきっと彼女なのであろう。 デビゾーとオニノスケと再結成した凹組4人。 凹組の将来は明るい。 私もお裾分けしてもらった気分で本を閉じることができた。 人によって友情でもよい、信頼でもいい、あるいは仕事のやりがいでもいい。 そう、本作は何か確かなものをつかみ取れる小説なのである。 オススメ(9) ...
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