『インディゴの夜 チョコレートビースト』 加藤実秋 (東京創元社) - 2006年06月13日(火) 加藤 実秋 / 東京創元社(2006/04/11) Amazonランキング:位 Amazonおすすめ度: <このシリーズにソフトカバーはよく似合う。> 渋谷のホスト達が大活躍し、躍動感溢れサクサク読める文章で読者に迫ってくる『インディゴの夜』の待望の続編。 初めて読まれる方は前作から読まれた方が登場人物の人間関係がつかめていいと思う。 私は若者(ホスト達)が若者を助けるために駆け回る姿がこの物語を一番熱くしていると思う。 だからオーナーサイド(主人公の晶・塩谷・憂夜)はちょっとした傍観者的な立場が良い。 あくまでも主役はホスト達である。 簡単に総括すれば全4編中、個人的には最初と最後がグッとくる物語で特に印象的。 事件の動機が良い意味でも悪い意味でも人間らしいところが読者に伝わってくるのである。 それに比べ、2編目と3編目は少し間延びした感が否めない。 もちろん、この作品に何を求めるかによって捉え方も違ってくるであろう。 しかし私的にはやはり、若者=ホスト達の疾走する姿が魅力的なので、各物語の話の中心も彼らの若さゆえの苦悩が中核をなしているものが自然と楽しめる。 2編目の「マイノリティ/マジョリティ」は編集者の話、3編目の「チョコレートビースト」はなぎさママのお店の話。 簡単に言えば、外部の人間を助ける話より自分達の同類(仲間)の人間を助ける方がより私のハートを揺さぶらせるのである。 ミステリー的には2編目、3編目の方が凝っているかもしれないが・・・ ホスト達それぞれの過去にまつわる話から物語が作られている1編目の「返報者」と最後の「真夜中のダーリン」はグッと来る話が盛り込まれていて楽しめた。 まさに私の本シリーズに求めているもの。多少、予定調和だったということは大目にみたいと思う。 脇役もホスト以外の人物はそれなりのキャラを発揮していたのだが、ジョン太、犬マン、DJ本気、アレックスやはりひとりひとりのホストたちの斬新さは前作ほどではなかった。 前作はホスト業界に関する記述だけでも目新しく読めたのであるが。 その分、なぎさママひとりに負担がかかり過ぎの感は否めない。 逆に少し皮肉な意見であるが、個性的なホスト達の話が少なかった分、前作以上に晶と塩谷との会話が面白かったようにも感じる。 ここからは3作目以降も本作が続くことを希望して書かせていただきますね。 本作の魅力のひとつにオーナーサイドとホスト達との見事な距離感が上げられると思う。 この絶妙な距離感が読者に伝わってきた前作。 少し具体的に書きますね。 作者は気の強い30代女性・高原晶を若者以上の大人の世代の読者の視点として起用。 彼女はホストクラブの経営者でありながら、表の顔として普通の仕事をしている(これは塩谷にも当てはまりますね) 一方、若い世代の読者はホスト達の世代に共感。 いろんないきさつがあって“インディゴ”にて働いている彼らに、自然と声援を送れるような話を読者の前に提供することに成功していたと言えよう。 前述した距離感が見事な連帯感に変わり、必然的に本シリーズの読者層の幅が広がったと言えよう。 若者の代表として主役を張っているマコトが大活躍する石田衣良さんの池袋ウエストゲートパークシリーズと違ったテイストを醸し出している。 少なくとも両シリーズとも似ている部分もあるが明らかに違った部分もあり、少なくとも前作は成功していた。 今回少し危機感を感じて読みおえた。 類まれなセンスの良い文章を紡げる作者ならきっと打破してくれると信じている。 次作あたり、表のオーナーの憂夜の過去が露わになる物語や吉田吉男の元気な姿を期待している。 作者にこの想いが届けば嬉しいのだが・・・ まあまあ(7) この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。 本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2006年8月31日迄) ...
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