『漢方小説』 中島たい子 (集英社) - 2005年04月01日(金) 漢方小説 すばる文学賞受賞作、芥川賞にもノミネートされたことでも有名である。 ズバリ、30歳前後(というか30歳超と言ったほうが適切かな)の女性の気持ちを等身大に表現した快作と言えそうだ。 冒頭からして面白い。 主人公のみのりはまず、胃が暴走して救急車で運ばれるのであるが、その原因は元カレが結婚すると聞いたから・・・(笑) その後、病院をいくつかまわったあと、漢方処方の病院にたどりつくのであるが、そこでの若い先生(坂口)にKOされる展開である。 男性が読むか、女性が読むかによってかなりスタンスが違う作品だと言えそうだ。 女性が読めば“共感小説”、男性が読めば“同情小説”、この微妙な違いの把握が作品を楽しめるかどうかのキーポイントとなってくる。 男性読者には少し理解し辛い点があるかもしれないが、多少なりとも主人公のような女性に可愛らしさを見出せたので楽しかったな。 少なくとも作中で漢方薬によって癒されたみのりの如く、女性読者には見事に処方された漢方薬のような作品であるのには間違いないところだと思う。 みのりと同じ境遇の読者が読めば、本を閉じた後、みのりからバトンタッチされたような気分になる。 読後前向きになったあなたに“じわっ〜”と効いてくるはずだ。 作中にて気づいた点を少し挙げたい。 まず第一に、みのりのまわりをとりまく人たち(飲み仲間)が実に巧く描写されている点である。 東洋医学と西洋医学の違いなど、読者にわかりやすく的確に説明をしてくれていて良い勉強の機会にもなったことも付け加えておきたい。 日頃、小説って読みやすいのが一番だと思っている。 本作は典型的ないわゆる“負け犬小説”なのかもしれない。 しかしながら、いわば“負け犬”に大いなるエールを贈っている点が見事である。 その結果として、性別を問わず心地よく受け入れられるであろう。 作者のセンスの良さを評価したいな。 あと、個人的には本年度“タイトルネーミング大賞”(こんな賞ないですが)の本命に推したいですね。 芥川賞は取れなかったけど、次作も是非読んでみたいと思わせる作家の出現に心からの拍手を贈りたく思う。 評価7点 2005年27冊目 ...
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