『ノーサラリーマン・ノークライ』 中場利一 幻冬舎 - 2004年07月10日(土) 《bk1へ》 サラリーマンの悲哀をコミカルかつほろずっぱく描いた作品である。 今や不況のあおりをもっとも受ける企業の代表格である銀行。 読んでいて○F○銀行がモデルなんだろうか?とふと思ったがみなさんはどうであろうか? 主人公カネテツは中堅大学を出て銀行に勤めるどこにでもいるサラリーマン。 ただ、勤めていた銀行が“吸収合併されて”いる点がポイントなんだがあんまり悲壮感が伝わってこない。 なかなか面白い作品なのであるが、主人公の後ろ向きさと言うか優柔不断さが目立ってスッキリしないような気がするのがちょっと読んだあと消化不良気味だった。 脇役陣がとっても個性的で余計に主人公がしぼんで見えたかな。 というか、脇役陣の方が一生懸命に生きているのである。幼なじみのサージ、上司のシート、メーデル、同僚の花木、かつての先輩のガンメンなどなど・・・ そのあたり、やはり今の時代の不安と希望のなさを浮き彫りにしたのであろうか? 本来の本作のあるべき意義と小説の内容が伴ってないような気がした。 しかしながら救いもある、カネテツが強引なキャラじゃないので三角関係(と呼ぶべきかな)に陥ってもそんなにドロドロしていないのである。 却って切ないチナツと今井の気持ちがわかったのは収穫だったような気がする。 サラリーマン小説というより“青春娯楽小説”として読んだ方が楽しめるかもしれないなというのが読後の結論である。 でもカネテツみたいな生き方がいちばん“無難”なのかもしれませんね。 私的には著者の“今の時代のやるせなさ”の象徴としてしか受け取らざるを得なかったのが少し残念だった。 個人的にはもう少し読者にエネルギーを与えて欲しかったな。 帯に“泣かないサラリーマンなんて、いない。 誰もが、大きな不安とほんの少しの夢を抱え、涙を流しながら歩いている。”とある。 確かに本作は中場さん得意の軽快な文章の読みやすい作品に仕上がっている。 しかし果たして読者の心を捉え切れたのだろうか? 少し“帯負け”しているような気がしたのは私だけであろうか? きっと帯が確信犯なんだろうな 評価6点 2004年65冊目 (新作47冊目) ...
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