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『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎 祥伝社ノンノベル - 2004年06月16日(水)

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かつてこんなに楽しい犯罪小説があっただろうか?

伊坂幸太郎の作品ってほとんどが仙台が舞台だが本作は横浜が舞台である。
持ち前の“軽妙洒脱な会話”“緻密な構成”で持って多くのファンを獲得した氏の作品においては遊び心満載のエンターテイメント作品となっている。

今や読者を本に没頭させてくれる力は他のどの作家にも引けをとらない。

個性的な4人のギャングたち。
タイトル通り本当に人生いろいろあっても“陽気”である。
強盗する銀行内の人間を「スピッツ」「シェパード」「グレート・デン」「ゴールデン・リトリバー」にたとえて呼んでるあたりはもっとも伊坂さんらしくてしっくり来る感じだ。
上手くいったはずの銀行強盗がとんでもないことに巻き込まれるのであるが、あいかわらずプロット作りはいろんな伏線を含めて巧妙である。

特に紅一点である雪子の存在感が大きく物語全体をより一層スケールの大きい物としている。

少し余談であるが、彼女が息子・慎一の父親(ここではダメ男の典型として描かれています)である地道に協力する筋書きは情の深さを垣間見た感じがしました。
少しは更生してほしいなあと思われた方も多いと思う。

伊坂作品に共通する“読後の爽快感”って一体何なんだろう?
きっと登場人物ひとりひとり(脇役も含めて)に伊坂さんの覇気が乗り移ってるのが1番の要因だと思う。
本作なんか犯罪小説なんだけど罪悪感を感じて読まれた方は皆無じゃないかな。

作者があとがきで次のように書かれている。「90分くらいの映画が好きです。」
ファンはきっと結論としては「90分の映画より先生の小説の方が好きです。続編希望!」とリプライするであろう。

それにしても新書で書き下ろし作品なんて今後はちょっと考えられないでしょうね(笑)
“何も考えずにスピード感溢れる本作を楽しんで欲しい”というのが私の本音である。

評価8点  
2004年58冊目 (旧作・再読作品14冊目)  


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