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『チルドレン』 伊坂幸太郎 講談社 - 2004年06月04日(金)

《bk1へ》
“旬の作家”を3人挙げろと言われたらあなたなら誰を挙げるだろうか?
私ならまず伊坂幸太郎を挙げ、続いて石田衣良垣根涼介を挙げる。
残りの2人に関しては異論があるかもしれないが、伊坂さんを挙げることに関しては作品の好き嫌いこそあれ異論はないはずである。

前作『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治新人文学賞を受賞、本作が受賞後の第一作となっている。
形式的には連作短編集となっているが、ほぼ長編に近いスタンスで楽しめる点が嬉しいかな。
本作を読んで強く感じた点は伊坂さんの作品って今に生きる私たちがつい忘れがちな“本音”の部分をさりげなく描写することによって読者に“一服の清涼剤”をもたらせてくれる点である。
作風的にはかなりの“技巧派”だといえる。

個性豊かなキャラ(本作では陣内)のとぼけた性格とハチャメチャな言動が世界を変えて行く。

奥田英朗さんの『イン・ザ・プール』の伊良部先生ほどではないけど本作の陣内もかなり変人です(苦笑)
俳優の陣内孝則さんの若いときの3枚目キャラを彷彿させてるのかもしれません。

冒頭の銀行強盗の人質シーンがとっても印象的だ。
そこでの永瀬との出会いがこの物語全体を支配する。
5話に散りばめられたファニーかつミラクルな世界。

さりげないという言葉がピッタシな形容であると思うが、まさにさりげなく親子愛の重要さを読者に訴えてる点は見逃せないかな。

伊坂さんの作品って発売されてすぐに読みたい衝動に駆られる。
それって私たちが暑い時に自然に水分補給するみたいな感じである。
必然的に伊坂作品を手にとられる方が多いのもうなずけるはずである。
私は伊坂ワールドって、他の世界では感じられない“穏やかな平和”を感じる。
その特異な才能がある故に、伊坂さんの活字離れ復興に担う責任の大きさは計り知れないような気がするのは私だけであろうか・・・

評価8点。  
2004年53冊目 (新作38冊目)




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