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『ジェシカが駆け抜けた七年間について』 歌野昌午 原書房 - 2004年05月19日(水)

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昨年刊行された『葉桜の頃に君を想うということ』が、このミスやさまざまな賞を受賞して一躍人気作家の仲間入りを果たした歌野さんの最新刊であるが、読んでみて声を大にして“物足りない”と叫びたい衝動に駆られたのは非常に残念である。

過酷で強い精神力を要する女子マラソン選手を題材としている作品であるだけに、いくら歌野さんであろうともああ言った(ここで語れないのは残念であるが)叙述トリックを使うとは“掟破り”だなあ。

確かに、本当に“分身術”があるのかどうかという興味一心に読まれた方も多くまんまと騙されたと思われた方もいらっしゃるかもしれない。

あるいは作中で取り上げられてる妊娠をすることによって運動能力がアップするって本当にあり得るのだろうか?という純然たる疑問・・・

結果としてジェシカの純粋無垢ぶりがクローズアップされたと言う見方もあるかもしれませんが、やはり現実の世界においても同じようなことがあるんじゃないかとどうしても懐疑的な気持ちで読まれた方もいるんじゃないかなあ。
爽やかさには欠けてるよな、この作品は・・・

少し視点を変えて述べれば、本作は出版社の“帯”におけるセリフの成果が十分に成功している作品であると言える。
あの帯のセリフが読者に“○○○○が殺した以外に考えられない!”という先入観を植えつけた効果は計り知れない。

少なからず否定的な感想を書いたが(笑)、所詮読書って合うか合わないかなので叙述トリック大好きな方は心して読んで貰いたいと思ったりもする。

ただ、『葉桜〜』未読なかたは『葉桜〜』から読まれることをオススメします。
ずっと『葉桜〜』の方が感動的な点は間違いないんじゃないかな・・

評価5点。    
2004年48冊目 (新作34冊目)


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