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『孤独か、それに等しいもの』 大崎善生 角川書店 - 2004年05月09日(日)

《bk1へ》
大崎さんの最新刊を手にとって見た。

既刊の短編集である『九月の四分の一』との大きな違いはなんといっても、本作においては女性主人公が全5篇中3篇を占めることであろう。

言わずと知れたことかもしれないが、大崎さんのファンって圧倒的に女性が多いと思う。
いままでは“繊細で優しい”男性主人公に対する“憧憬”を強く持たせることによってファンを虜にして来た感が強いが、本作は女性主人公に大いに共感させる(女性読者が)ことを大前提にして書かれている。
ある意味、冒険かもしれないが、裏返せば大いなる“自信”の表れでもあるんじゃないかな。

読んでみて、杞憂だったことに気づくはずである。
個人的には女性主人公の作品の方が圧倒的に感動的であった。

一因として、私が男性であるという事もあるのかもしれないが、大崎さんの繊細な文章と過去を顧みる(いわば回想)パターン化された作風からして、よりマッチングしているような気がした。

なんと言っても冒頭の「八月の傾斜」が予想に違わず素晴らしい。
読者の失われつつある“青春のきらめき”を呼び戻してくれる名作である。

あとこれも女性主人公なんだが、亡くなった双子の妹をいつまでも思いやる姿が印象的な表題作の「孤独か、それに等しいもの」

ラストの「ソウルケージ」も主人公が女性である。
この作品は今までは恋愛を中心に据えた話が大半だったけど、“親子愛”が基本ベースとなっていてより泣かせる話となっている。



大崎さんの作品を読むと自分の恋愛経験不足が強く認識できるのであるが(笑)、人生に置き換えてグローバルに見据えると、吸収できるというか見習うべき点は多い。

どの作品においても過去と訣別し、未来に向かって“覚悟”とも言うべき決意を表しスタートを切る主人公たち。

読み終えて本を閉じた時、主人公達に大きな拍手を送らずにはいられない。

読んでいて切ないがゆえに息苦しく感じた。
こんな方も多いんじゃないかな。
大崎さんのひたむきさを十分に理解した証拠である。

評価9点。オススメ    
2004年44冊目 (新作31冊目)


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