『弱法師』(よろぼし) 中山可穂 文藝春秋 - 2004年04月28日(水) 《bk1へ》 著者の自作を語るはこちら 久々に中山可穂さんの新刊を手にとって見た。 まるで魂を抜かれたような作品だ。 石田衣良がサラリとした恋愛小説を得意とするのとは対照的に、中山可穂は濃密な恋愛を描かせたら天下一品である。 3篇からなる能の世界をモチーフとした中編集である。 月並みな言葉であるが3編それぞれが“秀逸”なのである。 従来の中山さんの作品(全部読んでませんが)の描いてきたもの(ビアン中心)と比べて、より深い次元の世界に突入した感じが強い。 きっと中山さんを支持する読者数も一気に増えそうな傑作作品である。 テーマは“かなわぬ恋”。 どの話も切なく心に残る。 表題作となってる「弱法師」は不治の病に苦しむ少年と彼を必死に助けようとする義父兼医師との純愛が描かれている。 「卒塔婆小町」はかつて編集者であったホームレスの老女と作家との狂気に満ちた恋が熱く語られる。 なんといっても聞き手役で作家志望の男、高丘の前向きなラストが印象的だ。 個人的にはラストの「浮舟」がベストかな。 真の親子愛や兄弟愛に渇望されてる方には恰好の作品となっている。 主人公碧生の成長小説としても読める点が他の2作品よりも印象深い。 本作は今まで少し偏見を持っていて中山さんの作品を敬遠されてた方にもきっと気に入っていただける作品だと思います。 大切に一字一字読んで感動を胸に沁み込ませて欲しいと思う。 ちなみに私は思わず読み終えてゆっくりと2〜3回深呼吸してみた。 どっぷりつかった証拠かな(笑) 凄く悲しくて痛々しいが、不思議と明日への活力となる作品であると確信しております。 評価9点。オススメ 2004年42冊目 (新作30冊目) ...
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