『残虐記』 桐野夏生 新潮社 - 2004年03月28日(日) 《bk1へ》 凄く“レベルの高い”作品である。 桐野さんの作品って“いくら深読みしたって深読みしすぎることがない!”ような気がする。 よって本作を征服するにはまさに桐野さんの“圧倒的な想像力の豊かさ”と“読者の想像力”との勝負が必要である。 本作は新潟の少女監禁事件をモチーフとして書かれている。 著者のもっとも得意とする社会派作品であるが、内容的には約一年間若い男に小学生の頃誘拐・監禁された少女の監禁後の人生にスポットが当てられている。 わずか220ページにいろんなものが詰まってるので一行も目を離せずに読まなくてはいけない。 正直、「残虐記」というインパクトの強いタイトルほど内容は重苦しくない。 ただ、女性や感情移入が激しい方が読まれたら少し辛い描写もあるかなあとは思ったりする。 どちらかと言えば、景子の監禁後の生活の方が“残虐”かもしれない。 彼女はずっと事件の事を隠して生きていかねばならない生活を余儀なくされるのである。 たとえば、景子と彼女の両親との関係や谷田部を追っていく姿などを考えても興味深い限りである。 あと、フィクションだから許せることかもしれない(ここを強調したい)が、健治の過去を読んでやはり多少なりとも同情された方も多いんじゃないかなあと思う。 大きな目で見たら、本作ってあらゆる点において読者に“人生における戒め”を提起しているのかもしれませんね。 作品の手法的には“入れ子方式”で語られてる為に謎が謎を読んで奥深いことは間違いないところであろう。 個人的にもっとも印象的なのは最後の夫(元検事)の編集者への手紙である。 やはり健治に対してかなり嫉妬していたのであろうか? そういう読み方をされた方は失踪先を特定出来たんじゃないかな(笑) 少なくとも限りない妻への愛情を強く感じ取れた点がやけに印象に残った。 評価8点。 2004年32冊目 (新作24冊目) ...
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