『白夜行』(再読) 東野圭吾 集英社文庫 - 2004年03月07日(日) 《bk1へ》 “ページを捲る手が止まらない!”・・・本好きにとっては究極の喜びである。 この作品にはそういう形容がピッタリだ。 文庫版にて約850ページ、後半になれば読み終えるのがもったいないような気になる。 東野氏が渾身の力を振り絞って書かれた最高のエンターテイメント作品である。 本作の登場人物の数は40名以上に及ぶ。 東野氏ほど読み手を意識して書かれる作家はいないと思えるが、本作はそれが特に顕著で成功していると言えよう。 主役である亮司と雪穂のそれぞれの内面が描かれていないのである。 まさに心憎い演出である。 彼らに接する人物によってしか想像することが出来ないが、東野氏の人物造型の確かさと創造力は他の追随を許さない。 少年少女時代において、家族が忌まわしい殺人事件に巻き込まれた2人。 その後2人の成長を追っていくのであるが、周囲の者が常に不幸に陥って行く。 まるで2人に翻弄されるが如く・・・ そのぐらい圧倒的に個性的な人物としてフィーチャーされているのである。 質屋殺しの犯人を追うという物語の焦点を踏まえつつ、読者はひたすらに亮介と雪穂との2人の成長振りを体感する。 常に接点があると信じつつ、ページを捲る手が止まらない。 でも、最後まで2人が会話を交わすことがなかった。 内容的には正真正銘の“重苦しい作品”である。でも読後感が決して暗い訳ではない。 読まれたほとんどすべての方が感じられてると思うが、“とっても緻密に構成された作品”である。 東野氏の“創造力”の豊かさと読者の“想像力”の豊かさが上手くミックスされた時、本作の主人公2人には嫌悪感を超越して深い共感を味わうことが出来る。 読後、“やり切れなさと切なさ”に浸られた読者がほとんどだと思う。 もちろん“小説の中であるから許され、感銘できる話”である。 しかしながら、少しでも物腰が柔らかくなったような気がするのは読者が“東野ワールド”のひとつの到達点を堪能された証にほかならない。 なぜなら大多数の男性読者は“女性には参りました!”と心の中で叫んだはずであるからだ。 その叫びは“東野さん、参りました!”という代弁の言葉でもあることは言うまでもない。 今回、続編『幻夜』の発売にあたり約4年振りに再読した。 大作は何回読み返しても色褪せることがない! 今回は笹垣刑事の執念とも言える事件への追跡振りと、あと本作における約20年の時代の流れを自分自身の過去に照らし合わせて少し懐かしい気分を味わいながら読んで見た。 視点を変えて読むと見えなかった側面が見えてくる。 日々の生活にも生かしたいものである(笑) 評価10点。超オススメ作品 2004年25冊目 (旧作・再読作品6冊目) ...
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