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『幕末新選組』(新装版) 池波正太郎 文春文庫 - 2004年02月24日(火)

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本作の主人公である永倉新八は、“剣を持ったら近藤勇以上”と言われた新選組二番隊隊長であるが、いわゆるビッグ3(近藤勇・土方歳三・沖田総司)に比べたらずっと存在感が薄い。
大きな理由として二つあげられる。
まず、生き残り隊士であるためにその人生に“悲壮感”がただよってない為にインパクトが弱い点。
次に、近藤勇や土方歳三のように“野心”がない点、言い換えれば“人情味があふれすぎてる”点。

特に後者は永倉新八の長所でもあり短所でもある気がする。
確かに新選組の隊士としたら“優しすぎる”かなと言う点は否めない。
読後感も物足りないのかもしれない。爽やかすぎるのである。
『燃えよ剣』のような強烈な男の生き様を描いたものではないのは事実だから・・・

本書においては池波さんの視点は後半近藤や土方に冷たいような気がする。
今度は同じ著者の『近藤勇白書』を是非読んで比較してみたいですね。
彼らの変わり果ててしまった人間性を非難してるように感じられるのは私だけだろうか?
池波さんの作風から言えばやはり“歴史小説”というより“時代小説”の方が合ってるのかも知れませんね。
少し軽妙すぎるかな?
新選組ファンの方は少し受け入れにくいかもしれません。
でも、永倉や原田(本書ではかなり親しくしております)がいたから近藤や土方が浮かび上がったという点は忘れてはならない。
この作品を読んだ読者は彼の長所を吸収できたはずである。
そう、ひたむきに生きることの素晴らしさ学び取ったはずだ。

特に印象に残ったエピソードとしては芹沢鴨に慕われ近藤が嫉妬するシーン、全編を貫いている市川宇八郎や藤堂平助との友情、晩年に実子お磯との再会シーンなど・・・

永倉新八が長寿をたもったのは彼の“人徳”に他ならないことは読者の胸に焼き付けられたはずである。

評価7点。    
2004年21冊目 (歴史・時代小説1冊目)



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