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『定年ゴジラ』(再読) 重松清 講談社文庫 - 2004年02月08日(日)

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本作は初期の重松さんの代表作とも言える連作短篇集です。

個人主義に走る風潮が強い昨今、ニュータウンと言う戦後の高度経済成長を象徴する住宅事情に身を任せ、あくせく働き通し定年を迎えた主人公山崎さんを中心とした定年後の戸惑いとそれに打ち勝っていく姿をハートウォーミングな話で綴っている。

重松さんが本作を執筆されたのが33〜34歳頃だと思われる。
まさに登場人物(60歳以上の男性中心)すべて、いわば重松さんの父親と同世代である。
読者はまるで自分の“数十年後”(30歳の読者であれば30年後)にエスコートされたみたいな気分にさせられる。

内容的には1話1話のエピソードどれも甲乙つけ難く素晴らしい。
脇を固める登場人物も個性的である。(特にバイリンガルみたいな転勤族の野村さんが印象的ですね)

重松さんの作品って読者に対して容赦しない点が特徴であるが、本作においても現実的な話から目を背けていない。
例えば、主人公の山崎さんの次女の不倫問題二世帯住宅嫁姑問題も大きな読ませどころとなっている。

もちろん本作は定年後の世代をターゲットとして書かれたのではない。本作の一番のセールスポイントは大半の読者が遠い彼方の時代だと思っている“定年後の生活”に現実感を持たせることによって、さらに読者の明日への活力を見出して行く点であろう。
“さあ、明日からも頑張ろう!”という感じかな(笑)

大半の読者は“親のありがたみ”がわかり日常生活における“妻(夫)・子どもに対する愛情を養える”ものだろう。

主人公の山崎さんって非常に勤勉・実直・真面目な人物だ。
読者にとっていいお手本かもしれない。
仕事に終われ家庭を顧みる事も出来ないぐらいに働いた登場人物であるからこそリアリティーに富んだ作品となっていることは、読者の胸に焼き付けられたはずだ。
“老後”って相撲で言うと千秋楽みたいなものかもしれない。
せめて、千秋楽の日にで7勝7敗で迎えられるような人生を歩んでもらえたらと思って書かれたような気がする。


重松さんは“平凡に生きる事の難しさ・尊さ”を読者に教えてくれる。
“人生における本当の幸せって何だろう”と模索してる時に、本書はきっとバイブル的存在になるであろう。
山崎さんの中に“重松さんの理想の父親像”を見出せたあなたは、“真の重松ファン”だと言えるんじゃないかなあと強く感じた。

評価9点。オススメ    
2004年14冊目 (旧作・再読作品3冊目)


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