『流星ワゴン』(再読) 重松清 講談社 - 2004年01月03日(土) 約2年ぶりに再読してみた。 親子愛をテーマとした重松さんの代表作と言える作品だ。 《bk1へ》 《Amazonへ》 もはやリストラ・不倫・受験等、現代社会に避けて通れない普遍的な題材を書かせたらこの人の右に出る人はいない。 誰もが悩みながら生きて行ってる姿を重松さんは誰よりも把握している。 本作の魅力はズバリ“勇気を与えられる読後感”と“究極の親子愛に接する感動”である。 まず前者から述べたいが、上記を達成する為に重松さんは他の重松作品にはみられない荒唐無稽な設定を用意している。 なんと、リアルな描写がお得意の重松さんの小説にSFファンタジー的要素がふんだんに盛り込まれているのである。 しかしながら読者に夢を持たせてくれそうなファンタジーと思いきや、とんでもない。 重松さんは読者に容赦はしない。 ただ、わずかだけど救い手をさしのべてくれる。 読者はその救いの手に酔いしれる。 本作において永田さんがオデッセイでエスコートしてくれる橋本親子をいいお手本としたのが印象的だ。 読者は現実世界に戻った“少し勇気を与えられた”永田さんに声援を送って本を閉じる。 きっと読者は永田さんよりも大きな勇気を与えられて日常生活に戻って行くのだろう。 次は親子愛について述べたい。 本作の設定は主人公の永田さんが37歳。息子の広樹は12歳。永田さんの親父のチュウさんは63歳(作中では37歳だが)。 本作において重松さんはチュウさんに“理想の父親像”を見出している。 何回も繰り返し読む事によって、読者の成長を覗い知れることが出来る点が重松作品を読む特徴であるが、私も2回目にあたり、初回よりチュウさんの気持ちを深く理解出来たような気がする。 初回に読んだ時は橋本親子の親子愛(この二人血が繋がってないが血が繋がってる親子以上に愛情深いのである)がとっても印象的だったのだが、今回はカズオとチュウさんとの関係が心に残った。 重松さんはカズオとチュウさんの親子愛を“朋輩”という言葉を使って表現している。 3回目に読む時は今回以上に二人の“朋輩”振りを楽しめそうな気がした。 『幼い頃の僕が、そこにいる。父に肩車されているときの僕は、おとなになったいまの僕よりも、ずっと背が高かった。いまの僕には見えないものも見えていたのかもしれない。』 ちょっと挫折感を味わった時や、やるせなさを感じた時に読むといいのでしょうね。 正直、“このレビューを読むより作品を読んでくれ”と声を大にして叫びたい。 重松さんのファンには重松さんの小説と言う強い味方がいると強く認識した1冊です。 評価9点。オススメ作品。 2004年1冊目 (旧作・再読作品1冊目) ...
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