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『スポーツドクター』 松樹剛史 集英社 - 2003年12月17日(水)

『ジョッキー』で小説すばる新人賞受賞を受賞した松樹さんの受賞第1作の書き下ろし作品です。
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『ジョッキー』に負けず劣らずのリアルな作品である。
作者の執筆に際しての徹底した取材振りが覗える。
他の作家が題材として選びにくい領域の作品を書けるという点は評価したい。
松樹さんの小説の特徴は必ず“人間ドラマ”が盛り込まれている点である。
今回は少し小振りとなった感は否めないが、バスケットボール大好きな繊細な女子高生夏希を主人公とした、スポーツクリニックを舞台とした成長物語として捉えたく思う。

小説の手法としたら少し新感覚の作品といえるかもしれない。
連作短編集なんだけど、1編目でクリニックの患者だった主人公夏希が2編目以降クリニックでアルバイトを始め事件に出くわす。
子どもに野球を押し付ける親、ドーピング疑惑の女子水泳選手など・・・

圧巻は最後の“ドーピング”がテーマの編だろう。
一流を目指すがゆえに苦労する選手サイドとコーチサイドの軋轢が見事に描かれている。

なんといっても重いテーマながら、2編目から夏希を主人公としたことによって視点が優しくなっている点が評価できる。
若い作家さんだから(26才)、主人公も若い方の方が持ち味出てるのかもしれない。

人間ドラマ的には“スポーツドクター”靫矢と“スポーツライター”小林との過去のいきさつが物語全体を支配している。
ただ、もう少し掘り下げて書いてほしかった気もする。
逆に夏希と義陽との恋愛的要素も盛り込まれてるのだが、こちらは中途半端な印象が拭えなかった。

でも松樹さんの難しいテーマに対する挑戦意欲は行間から読み取ることが出来た気がする。

評価7点。


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