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『ロックンロール』 大崎善生 マガジンハウス - 2003年12月02日(火)

やはり、大崎善生には大人の恋がよく似合う・・・
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内容的には半分私小説に近いのかもしれません。
熱帯魚専門雑誌の編集長を辞めて、作家に転身した主人公がなかなか書けない2作目をパリで書くことに・・・

過去に対して追憶の念が絶えないのが彼の小説の特徴であるが、本作も登場人物3人ともとってももどかしい点が共通している。
いわば、3人のもどかしさと言うか、童心のような心を作中の『ロックンロール』という小説の主人公に委ねているのでしょう。

パリで繰り広げられる恋模様に関しては少し期待はずれの感は否めないが、人と一緒にいることの喜びを強く思い起こさせてくれる点は一読の価値がある作品だといえよう。
ただ、若い方でタイトル名ともなったレッド・ツェッペリンや作中で出てくるジェフ・ベックの音楽に関して、ある程度の予備知識があるかどうかによって大崎さんの世界に入り込めるかどうかはかなり違ってくるような気がした。

あと、他の作品より少しユーモラスな描写も増えたような気もします。例えば、恋愛相手の名前をしりとりに例えたり、あるいは恋人を“ジャパネットた○た”にたとえたり・・・

読後に“小さな石がポケットの中に入り込んだ気分になれた”だけでも幸せを噛みしめれたことではないだろうか。

『なぜ人はこんなにも苦しみ、悶えるような思いで、石ころとなり坂を転がり続けなくてはならないのだろう。転がっていった先にはいったい何が待っているというのだろう。僕にはわからない。』(本文より)

ロマンティックな恋愛小説を期待された方は少し肩透かしをくらうかもしれません。
ただ、大崎さんの作風の幅が広がったのは間違いないと思われます。
きっと、読者にとってポパイのほうれん草のように“小さな石”がなってくれればという願いを込めて書かれたのでしょう。

評価7点。


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