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『影踏み』 横山秀夫 祥伝社 - 2003年11月14日(金)

大作『クライマーズ・ハイ』のあとの作品の為に非常に期待して読んだのだが、正直言って肩透かしを食らった感は否めない。
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横山さんの主人公は一貫して正義感の強い人間が務めることによってその生き様が大いに読者に共感を呼ぶのだろうが、本作は窃盗罪の常習犯で“ノビカベ”の異名を持つ真壁修一を主人公としてる点が異彩を放っている。

長編作品なんだが、雑誌連載の弊害が出てる点も否めず、ところどころ不自然なつながり方というか、焦点の定まらない話の進み方が読者の集中力を妨げたような気がする。
それぞれのシーンは緊迫感のある文章と会話でいいのだけど、上手く機能してないのが残念だ。
全7章中、5編目の「使徒」は独立して考えてもとっても良い話なのは印象的だが、いかんせん、双子の弟との会話がそんなに彼の人生を変えてるのかなあという疑問を持って読んでるためにインパクトが薄い気がした。

あと、登場人物の繋がりもいささかわかり辛かった点もあげておきたい。
正直、初めて横山さんの作品を読まれる方にはオススメしたくない作品と言えそうですね(笑)

本作の評価の分かれどころは、久子との修復を勧める亡き啓二(修一の意識の中に棲みついてます)との兄弟愛をどう捉えるかが一番のポイントとなってくるでしょう。
個人的には主人公が少しでも更正しようとういう意志を読者に投げかけてくれなかった点は残念な気がした。
ラストで火事の時の亡き弟と母親の関係が語られますが、ちょっとインパクトが弱かったというか引き込まれませんでしたわ、今回は・・・
ただ、双子の方が読まれた場合の感想は聞きたいと思いますね。

横山さんの作品の中では一番ハードボイルドタッチであることも付け加えておきたいですね。
暴力シーンは楽しめます(笑)

次作大いに期待しましょう。
横山さんにはもっと前向きに生きる男を描いて欲しいです。

評価6点。

横山さん著作リストはこちら


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