『13階段』 高野和明 講談社 - 2003年10月10日(金) ご存知江戸川乱歩賞受賞作の作品であるが、なかなか読めなかったのだけど映画化もされたので手にとって見た。 社会派ミステリー大作としてとっても良く出来た作品だと思う。 《bk1へ》 《Amazonへ》 “死刑”制度に冤罪という最もあるまじき事についてとにかく読ませてくれる。 問題が問題だけに、どうしても新聞を読んだりした時に同じような題材の記事に目が行ってしまうのはいい勉強となったことの証しかな。 展開的にも途中でハッとさせられる場面も出てきてスリリングである。 犯罪者に対する前向き度においてもよく似た題材の 『手紙』や『繋がれた明日』と比べて、より前向きな気もしたが全体的には物悲しさがつきまとった作品である。 出来栄えとしては前2作とほぼ互角かな? トップクラスの2人と互角に渡り合えるというのは並々ならぬ才能を感じられたことは言うまでもない。 こちらの作品の方が暗部まで描いてるので奥が深いとも取れるかもしれませんね。 あと、ミステリー要素は誰がやったのかという興味は最後のあたりまで尽きませんので高いです。 逆に主人公の心の葛藤面は比較するとドライだったような気もします。 仮釈放中の青年(三上)と、絶望した刑務官(南郷)の2人が主人公といった作品と言えそうですがこれも新しい趣向の作品として受け入れられたと思う。 2人が同じぐらい重要な役割を演じてる事は最後まで読めばわかります。 個人的には南郷の過去の苦悩(死刑執行)にスポットを当てた描写には舌を巻かざるを得なかった。 男として南郷の生き方にはとっても共感できた方は多かったのじゃないかな。 あのまま執行されてたらどうなってたのかという憤りに近い気持ちを持ちつつ読み耽り、それがラストの数行で一転します。 こんな事あってはいけないという気持ちが強くなられて本を閉じた方が大半じゃなかったでしょうか。 敢えて、少し気になった点も書きますね。 それは、三上がラストで南郷に宛てた手紙の内容(10年前のいきさつ)なんですが出来すぎというかちょっとイメージが損なわれた気もします。 その辺が読み終えるにあたって評価の分岐点となるのかもしれませんね。 三上を正当化したような気もしたが、スッキリ出来ない点も芽生えたかなと思いますが読み込み不足かな? エンターテイメント作品としても楽しめ、最後に読者に問題も提議してくれる本作は、普段第三者的に捉えてる読者に多少なりとも当事者の気持ちに入り込めさせた点はその読み応え度の高さを示している。 死刑制度というむずかしいテーマに真正面からぶつかって行った高野氏に拍手を送りたいと思う。 評価8点。 ...
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