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コラム 乙川さんと宇江佐さん - 2003年10月09日(木)

乙川優三郎さんと宇江佐真理さん、結構私のサイトに遊びに来てくれてる方はご存知な方が増えてると思いますが、おふたりとも現在の時代小説界で人気実力ともにトップの地位を固めてる方だと思います。

今日は2人の作風の違いについて(結構違うのですよ)語りたいと思います。

まず、乙川さんですが、(乙川優三郎著作リストへ
作風的に山本周五郎や藤沢周平に似ていて古くからの伝統的な時代小説のスタイルを継承している。
登場人物は真面目だが不器用で世渡り下手な人物が多い。
文章も一語一語丹念に書かれていてその完成度の高さは読者を“乙川ワールド”に引きずり込んでくれるのである。
彼のどの作品を読んでも“人生の岐路”に立った人の喜びや悲しみを納得の行く筋書きで語ってくれ、読者に読後の感銘と読書の奥の深さを教えてくれる。
どちらかと言えば、代表作である『霧の橋』のような長編小説が得意とされていたが、直木賞受賞作の『生きる』や最新作の『武家用心集』での中短篇にも力量をいかんなく発揮できるようになり、最近では文芸雑誌に初の連作短篇を掲載し始めている。
少し健康面に心配な点があるらしいが、寡作でもいいので書き続けて行って欲しいと思う。

個人的にとっても資質の高い方だと思います。
受賞すべくして受賞した直木賞、これからは、10年20年後語り継がれる作家となって欲しいと思ったりしています。


逆に宇江佐さんは、(宇江佐真理著作リストへ古くからのスタイルに新しい要素を取り入れて上手く作品に融合させている。
文章は乙川さんより自由奔放というか現代的で読みやすい。
登場人物も気風が良くって人情味溢れ、喜怒哀楽の激しい人物が多い。
人の感情をセリフにさせたら天下一品で、人間の光り輝いている部分をビビッドに描写しているのでとっても登場人物に共感出来、幸せな気分に浸れるのである。
代表作である髪結い伊三次シリーズも『黒く塗れ』で5巻目を迎えた。
彼女のライフワーク的作品とも言えそうで、ヒロイン“お文”の幸せはきっと宇江佐さんの幸せに違いない。
最近は歴史小説の方にも活躍の場を広げようとされてる。
髪結い伊三次シリーズ以外にも数多くのクオリティ高い作品を書き続けている点は読者の期待を裏切らない。
(個人的に『あやめ横丁の人々』『斬られ権佐』は特に完成度が高いと思います。)

直木賞に6回もノミネートされながらいまだに受賞出来ないのは不運の一語に尽きる。


いわば、乙川さんの作品を読めば“時代小説ってこんなにも良かったのか!”と感じ、一方、宇江佐さんの作品を読めば“時代小説ってこんなに読みやすかったのか!”と感じるはずだ。

ちょっと言いたいことが半分位しか語れなかったが、この2人の作家の作品をリアルタイムに読める喜びを噛みしめたいと思う。
乙川さんからは“人生の奥の深さ”を、宇江佐さんからは“人を愛することの素晴らしさ”を学び取ることが出来たから・・・





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