『九月の四分の一』 大崎善生 新潮社 - 2003年10月04日(土) 大崎さんの作品は初めて読んだが噂どおりとっても美しい文章を書く方である。 4篇からなる短篇集であるがいずれも男性が主人公。 自分の青年時代を中年になって振り返っていますが、女性が読めば好感を持てることはまず間違いないでしょう。 とっても、繊細だからどの主人公も・・・ 《bk1へ》 《Amazonへ》 この作品を読めば、誰もが経験したような青春のほろずっぱさが活字となって甦ってくる。 読者は自分の過去の体験と照らし合わせて読み進め感慨にふけるのであろう。 自分の過去の日記を読んでるような感覚で楽しめるかどうかがこの作品の評価に繋がってくるのではないでしょうか。 言い方を変えれば、読者の過去の恋愛の経験度数によって共感度が変わってくるとも言えるでしょうね。 どの主人公も報われなかったけど過去の恋愛を通して成長したという事実を噛みしめたい。 過去を後悔してるんじゃなくって、踏み台にしている点は本当に見習いたいです。ハイ。 どちらかと言えば既婚者向けの作品だと思う。 と言っても不倫の本じゃないですよ。 回想してるのは青春(独身)時代の恋愛ばかりですから。 ただ、独身で現在進行形で深く恋愛してる方には市川拓司さんの作品の方が合ってるかも知れません。 基本的に中年男性の視点で書かれてますのでどの作品も・・・ あと、いずれも恋愛が終ったと言う結果がわかってから書いてますので現在深く恋愛されてる方には辛いかもね。 普通の恋愛が出来ない(世間一般的に)方が、本の世界ではあるけど究極の恋愛を楽しめる本と言ったら良いのでしょう。 まるで読者が小説内のヒーロー・ヒロインになれる(体験できる)かのように。 4篇ともとってもクオリティの高い作品集ですが、タイトル名にもなっている「九月の四分の一」が一番ロマンティックでいいかな。 この短篇は個人的には今年のベスト1かもしれませんね。 読み終えてふとヨーロッパに行きたいと強く感じた方も多いはずです。 女性にプレゼントするのには恰好の本かもしれませんね。 そうそう、それぞれの篇に“ストーンズ・ビートルズ・アバ・レッドツェッペリン”の音楽が効果的に挿入されてます。 きっと本作を読まれて懐かしい曲を楽しまれたかたも多いんじゃないかな。 でも、基本的にはじっくりクラシックでも聞きながら読むのにいい作品だと思います。 私的には大崎さん、本多孝好さん、市川たくじさんの3人が文章が綺麗なベスト3となりました。 重松清さんの書評も是非お読みください。 評価8点。 ...
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