『リアルワールド』 桐野夏生 集英社 - 2003年09月25日(木) 桐野さんの作品を久し振りに読んだがとても洞察力の鋭い方だと強く感じた。 《bk1へ》 《Amazonへ》 代表作である『OUT』の高校生版といってもいい感じの作品であるが、破滅的なストーリー展開の中にも巧みに“現代社会の問題点”を盛り込んでるあたりは見事と言うほかない。 それぞれ(ミミズと女子高生4名の計5名)が一人称で章ごとの主役を担っていて読みやすいし展開も目が離せない。 多少、ミミズ(男)に翻弄されてて納得行かない点もあるが、4人の女子高生のそれぞれの性格分類が非常に明確にされていて物語自体をすごく活性化してるような気がした。 特に、テラウチの小学校時代(私立小学校)からのエピソードや母のことなんかは都会に住む読者にとって人ごととは言えないのではなかろうか? もっともしたたかっぽく見える(したたかというかしっかりしたと言ったほうがいいのかもしれない)人物が、残念ながら実はもっとも繊細だったのが皮肉かつショッキングだった。 でもちょっとした好奇心(ゲーム)が大変なこと(リアルワールド)を引き起こすって注意しなければなりませんね。 あと、4人の女友達同士がお互いをどう思ってるかという描写シーンも読みどころのひとつでした。 それぞれの繊細かつ揺れる心の動きがとっても印象的です。 ただ、ちょっと男性のミミズに関する描写がどうしても弱いと言うか物足りなさを感じたのも事実です。 女性のそれぞれの心理はわかるのだが、ミミズはどうしても異常としかいいようがないのではなかろうか・・・ やはり人の命を軽薄に扱ってるように感じられたのがマイナス点でしょう。 本作はひとつの教訓小説として捉えたい作品である。 深読みしたら辛く悲しすぎるからだ。 どうか“氷山の一角”であって欲しいと思う気持ちが強く本を閉じました。 でも、年頃の娘さんをお持ちの読者の方って人ごととはいえない作品でしょうね(笑) 評価7点 ...
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