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『火の粉』 雫井修介 幻冬舎 - 2003年07月22日(火)

各サイトで評判の高い本作だが社会派大作を期待して読んだ為に少し期待はずれだった。
確かに非常にテンポよく読める作品である。
老人介護問題・嫁姑の立場の問題なども扱っておりかなり取材して書かれているのも注目に値する。
展開的にもスリリング&サスペンスフルで読ませてくれるのも間違いない。

でもいかんせん、“冤罪者が実はそうじゃなかった”という内容があんまり好きじゃない。
問題が大きなだけに人間誰でも間違いがあるということで済ませて欲しくない気がする。
本当の冤罪の方で苦労をされてる方に気の毒かなあという気持ちが読んでいて強かった。
ミステリー的に見ても、途中で武内か池本かどちらが犯人かわからないような場面があってそこまでは楽しめたのだが、それ以降はあまりにも展開がハッキリしてきて妙味に欠けるような気がした。

武内に関しても単なる“狂人”としか受け取れなかった。もっと過去の生い立ちに触れ(触れてるのですが)何故こんな人間になったのかを描写してほしかったなあと思う。
もう少し救いの手を差し伸べてあげて欲しかったです。

あと、裁判官の勲と俊郎親子のちょっと無神経というか機転の利かなさが気になって仕方なかった。
火の粉の張本人の勲の心の動きの描写が少ないのが残念な気もした。
もっと勲の心の苦悩を書くべきだったと思う。
読んでみると、嫁の雪見が主人公みたいに扱われてるが、判決を下した勲をもっとクローズアップしなければ意味がないなあと思った。

ちょっと辛口になりましたが、非常に文章の読みやすい作家さんだということを付け加えておきたい。
これからますます期待できると思います。
エンターテイメントとして割り切って読めば楽しく読めることは間違いないでしょう。

評価7点。


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