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『青空の卵』 坂木司 東京創元社 - 2003年06月20日(金)

作者と同名の坂木司は外資系の生保に勤めるサラリーマンでワトソン役。
彼の友達でひきこもりの鳥井はプログラマーで料理が得意でホームズ役。
いつも坂木が持ってくる相談事を鳥井が名推理で暴いて行くのであった・・・

日常に起こるミステリーなんだけど、1篇1篇が結構長くて奥も深い。
ひきこもりの鳥井を中心に事件を追うごとに成長をしていく姿も見られまた四季感も織り交ぜていて心地よい。
そしてなんと言ってもとっても文章が上手いなあと感じる。

題材的にも日常のありふれたものが、実はかなり社会派的な題材であったり(性犯罪や障害者問題)して興味は尽きない。
ちょっと推理が飛躍しすぎと言うかこじつけ過ぎな感も否めないが、それを言い出したら小説は楽しめないと割り切って読んだ(笑)

坂木の人の良さは作者の暖かいまなざしだと感じ取れます。
話が進むごとに前に出てきた人が登場して活躍するシーンも微笑ましく感じられる。
最後の料理屋を開く短い1編なんかはその典型だといえよう。

ちょっと奇妙なりにも男の友情っていいなあと痛感させられる1冊と言えそうです。
ただ、鳥井に関しては多少なりともわがままな性格なんで(そのいきさつは別として)ちょっとイライラされるかもしれませんね。

巻末のインタビューを見ると作者はプロフィールを明かしてないがはたして男性だろうか女性だろうか?
加納朋子さんや北村薫さんのファンの方は是非読み比べて欲しいと思う。

評価8点。


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