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『眩惑』 諸田玲子 徳間文庫 - 2003年06月16日(月)

諸田さんのデビュー作である単行本『眩惑』に書き下ろし1篇を加えた3篇からなる初めての文庫本です。
諸田さん著作リスト《こちら》

いずれもが魅力ある女性に翻弄される男の人生を描いている。
時にミステリアスに時にシニカルに描いていてテンポ良く読める。

女の情念の凄さ・怖さを思い知ることが出来る作品と言えそうで、現在の諸田さんのエッセンスが凝縮された作品といえよう。
冒頭の「花火」は特に歯切れが良くドラマティック。見事なラストに唸らされてしまった。
佐和さん、恐れ入りましたといいたいです。

中編の「竹薮をぬけて」はラストが私的には混乱を招いてわかりづらかったです。ちょっと評価の分かれる作品と言えそうですね。
哀しい作品といえそうです。

表題作の「眩惑」、まとまってていいのだけど、結末がわかっててそれを振り返るという流れがちょっと受け付けなかったかな。

どの話も緊迫感があって思わず読者も眩惑されそうになる作品です。
ちょっと男がだらしないのだが、当たってる点を突いているので否定のしようがない(笑)
デビュー作としたらまずまずといったところでしょうかね。
文体的にはハードボイルド調の作品集と言えそうです。

「なぜ、すまないと思わなきゃいけないんです?松之助さまに惚れていたのはほんとですけど、でもあのお方は死んじまったんですよ。死んじまったお人に操をたてたって、だれも喜びゃしません」

評価7点。


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