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『ストロボ』 真保裕一 新潮文庫 - 2003年05月15日(木)

久々に真保さんの作品を読みました。文庫新刊です。5編からなる連作短編集となっている。
どの短編も引き締まった内容でグイグイ引きつけられる。
ある程度の地位と名声を極めたカメラマン、喜多川の過去を振り返るエピソードが上手く綴られている。特に「一瞬」は秀逸。

通常とは違った年代を遡る事によって(50歳から22歳まで)インパクトを強めている。

具体的な出来事(例えば長嶋茂雄の引退やサッチャー首相の当選など)を上手く散りばめて時代の流れを実感する事が出来、しみじみと読める作品といえると思う。

妻を愛するという最終的なモチーフも感じ取れますが、少し男の身勝手さが表に出過ぎかなあと思ったりもするのですが・・・
妻の喜美子さん、しあわせなのかなあ?と思うことしきり。
でも、誰しも男だったらいろんな点で似た体験があると感じて読めるでしょうね。特に情熱的に生きている主人公はうらやましく感じる部分が多々あるのだけど・・・
タイトルのとおりあたかも写真を見るようにその時々の情景を描写した短編集だといえそうですね。

この作品の良否は徐々に若いときの情熱を想い出そうとしている主人公を熱く感じ取って読むことが出来るかどうかがポイントとなってると思う。
読者の年代によって違った捉え方となりそうな感じ。
横山秀夫さんの主人公の方が誠実に生きていると思いますが(笑)・・・
でもこの作品の主人公の方が人間らしいかな?
読み進めて行くにつれ(若返る)悩みながらもハツラツと生きて行ってる主人公には少し残念な気持ちがしました(苦笑)
そこが真保さんの狙いなんでしょうね。

評価8点。


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