Kyoto Sanga Sketch Book
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2012年01月01日(日) 【J2最終節−天皇杯決勝 東京戦】〜最も幸せなサッカーファンになる為に

J2降格とともにレギュラーの中堅以上の選手がごっそり抜け、
チーム構成はまた若くなった。
特にFW登録は平均年齢18歳を”切る”ときすら普通に。

でも二桁順位の時期も長く、
結局、一度もJ1昇格争いに加わることはなく。

選手が揃い、攻撃的な大木監督の戦術が浸透始めた時は、
もうリーグは終盤になっていた。




一.J2リーグ最終節 岐阜戦

12月3日。
リーグ序盤では考えられないぐらい、
相手チームを圧倒するサンガが西京極にいた。
ショートパスが面白いように繋がる。
ボールは敵を寄せ付けない紫の選手の間だけを行きかっていた。

京都3−1岐阜
試合内容は点差以上。



バックスタンドの大勢の子供達が選手を見ようと、
僕たちのヒーロー達に近づこうと、
フェンスにドンドンとしがみついて行く。
まるで小鳥の大群のよう。
私の小さな甥っ子もフェンスによじ登って、
サンガ選手が出てくるのを興奮して待っていた。

「子供ってシンプルなんだよね」
 妹が笑って言った。
「勝ったら”サンガつよいー!かっこいいー!”だから」
でもその時はまだ、相手がJ2最下位のチームだからとも思っていた。


   その一週間後。
   後援会のアワードパーティで、
   京風フレンチと辛口の上級白ワイン、
   そして、なぜか前向きな選手達に私達は大勢出会う。
   「J1昇格できなかったのに。」

   おねーさんには良くわからん…。


   その後、思い知ることに。
   成長期真っ只中のこのチームのシーズンは
   まだ続いていた。




二.天皇杯決勝まで

10月10日 佐川印刷SC(JFL) 3−0
11月16日 モンテディオ山形(J1) 3−2
12月17日 鹿島アントラーズ(J1) 1−0
12月24日 湘南ベルマーレ(J2) 1−0

そして、準決勝。
12月29日 横浜Fマリノス(J1)戦

後半、終了間際に追いつかれたのに、
相手はJ1の強豪チームなのに、
延長開始に選手たちは驚くことに笑っていた。
「喜べ。あと30分まだサッカーができるぞ!」と監督は選手に言ったらしい。

大木監督の「裕也(久保)、いくか」というのをテレビカメラは捕らえていた。
うなずいた高校生が、ピッチに向かって走り出した。

彼の1ゴール、そして1アシストで試合は決まった。

京都4-2横浜FM(延長)


元日 → ACL → たいへん・・・!

・・・まだ、心配するには早いって(笑)
でも、確かに今の京都は強い。本当に強いような気が。

   元日に国立で自分のチームを応援できるサポーターは、
   「日本で最も幸せなサッカーファン」。
   9年ぶりにそのときが。



三.天皇杯決勝

「J1なんてラララー」
悪ふざけの好きなFC東京サポーターの合唱が聴こえる。
(ご一緒に、と言われてもねぇ・・・(苦笑))

2013年元日。国立競技場は9年前と同じ光景。
元日の東京の空は雲ってはいるけど、何万もの観衆が、
年に一度、日本最高峰の試合を観に集まっている。
そこのゴール裏、当事者サポーターとして参加できる幸せ。
今回特殊なのは、それが「J2」同士の戦いであること。

   ただ、今年度はJ1優勝すら昇格したばかりの柏でした。
   FC東京はJ2優勝。
   もともと、降格したのが不思議なぐらいの選手構成。

   一方、J2で7位の京都は
   守備を束ねていた秋本の出場停止で、ただでさえ弱いDFは非常事態。
   他ポジションから流用して急場をしのぐ。
   東京にはリーグ2試合とも大差で負けているし、
   なにより、皆が大木サッカーはワイドにピッチを使う、
   堅守なカウンターの東京タイプは苦手なんじゃないか、と言い…。

   けど、最近の京都は弱気な予想をいつも覆していた。
   宮吉ら選手の疲労も心配だが、考えても仕方がないし。



「おれたち(もう)J1!」「おまえらJ2!」
FC東京側のコールに、
京都ゴール裏が一斉にブーイングで答えた。
それを無視して、東京側はまた「J1なんてラララ…」と跳ねながら歌いだした。

京都ゴール裏ではコールリーダーが叫んだ。
「選手たちと同じく、俺達も楽しもうぜ!」と。

マジメだ・・・

国立で、西京極と同じように選手へのコールが響く。
席に置かれた白い画用紙を掲げた。
前回優勝の2003年と2012年を結ぶ、紫と白の画用紙でのコレオグラフィー。
サポーター持参の大旗も、全国からみたこともないぐらい集まっていた。
9年前、サポーターの人数が少なくて
他クラブサポーターが大勢混じっていたあのときとは違う。紫に染まっている。
(もちろん、東京サポに比べたらずっと少ないけど。)

「日本一に恥じない、高レベルの試合ができるだろうか。」
全国に日本を代表するサッカーの試合として放送される。
ここにも4万を超える観衆が集まっている。
私達はこの試合の”当事者”だ。
関東のサッカーファンにメールをして再確認してしまった。

深呼吸しても緊張が抜けず、早くもビールをあおって。


     宮吉 ドゥトラ
      中村充孝   
    中山    工藤
       ウヨン
   福村 森下 安藤 加藤弘堅

       水谷

   CB秋本の出場停止により、
   SBの安藤をCBに移動。
   MFの弘堅をSBに下げた緊急布陣。

   東京はルーカスの1トップに
   今野や石川などお馴染みの有名選手が並ぶ。



■前半

ドゥトラがボールを持って走る。
阻もうとする東京のDF達。
走りこんで来た選手にボールは渡った。
前には誰もいない!シュート。
私達から遠いゴールネットが揺れたのが見えた!

京都、キャプテン中山の先制。1−0。

   全国から集まった20本を超える紫の大旗が国立の空に舞い、
   ゴール裏はお祭り状態!
   早くももう訳わからなくなって、
   隣同士だけではなく、横からも後ろからも色んな人の手が伸びて来た。
   場内アナウンスとサポーターのコールでまた騒然と。
   まるで9年前のチソンや黒部のゴールの時のようでした。


しかし、たった2分後。
ショートコーナーから今野が押し込み同点に追いつかれる。1−1。


   しばらくして気がついた。
   コンクリートの強固なベンチとスタンドが酷く揺れている。
   それが地震であることを理解するまでかなり時間がかかった。
   試合は当たり前のように続いていたから。

   地震で揺れるスタンドから観るピッチ上の状況は悪くなっていった。

   

石川らの東京のサイドを使ったスピードのある攻撃、
そして、ルーカスの飛び出しに、
失点後、京都はまた押されつつあった。

36分。フリーキックから森重にシュートを決められ逆転される。1−2

42分。GK水谷のゴールキックのクリアをルーカスが奪い突き放された。1−3


終了間際まで攻められ続けた。


■後半

ゴール裏、京都サポーターの視線の先に、
ペナルティエリアの少し向こうに、紫の選手たち。
自分達の支配する空間であることを示すように、
まるで慣れた鋭いナイフを自由勝手に振り回すように、
紫の選手はエリア内でパス交換を続けている。
それを見下ろすように、応援は続いていた。

   でも、いつもなら・・・
   工藤がもっと大胆に切り裂く。
   ドゥトラがもっとダイナミックに走り、
   そして、われ等が宮吉がもっともっと素早く顔を出す。
   今までの試合と比べて運動量が落ちている。
   その先にいけない。


京都の細かいパス回しに、東京は容易にはついていかない。
でも、一度東京が奪うとそれは逆サイドに大きく回され、
その手薄になった反対サイドで、京都はカウンターを食らう。

   京都ゴール裏は、歌いながら辛抱強くそれを見ていた。
   でも、応援の声も少しづつ小さくなって。

カウンターから東京のルーカスがまた得点。
この失点で1−4に。


54分ドゥトラから久保に、
58分負傷の中村充孝から駒井に交代
前線は3人のユース出身十代の選手に任された。


若いフレッシュな選手の勢いで、流れが変わった気がした。
動きたい、勝ちたい、とまた紫の生き物はまとまり出した。


東京の選手が、京都の若い前線選手を追いかけるようになった。
クロスに反応した中山のオーバーヘッドシュート。
ウヨンのフリーキックはゴールへ向かった。

そして、
私達から見て左からコーナーキックのボールが入った。
そのボールに飛び込む選手。
ボールは私達の目の前、ネットの中へ!

京都、久保のゴール!2−4。2点差に追いつく。
「やっぱり久保君は天才!!」と準決勝のようについ叫ぶ。


コールリーダーの「楽しもう」という言葉が蘇る。


76分。加藤弘堅から下畠に交代
公式戦初出場の彼で、もうフィールダーの約半分は十代の選手に。

そして、
残り時間は十数分で2点追い上げなければならないのに、
京都はパワープレーをせず、同じサッカーを続ける。
密集の中でボールを運び、彼らの方法でゲームを支配しようと。

東京が守備を固めだしても、紫の選手はそのスタイルを貫き続けた。
彼らは自分に一番近い紫の選手に、鋭くボールを送り続けた。

アディショナルタイム。
最後の京都のチャンスが来た。
ウヨンのフリーキック。

バーを叩いた。

紫のゴール裏は、ウワーという残念な悲鳴に覆われた。


試合終了。
京都2−4東京





東京の選手達がベンチから飛び出して来た。
あちらの選手が抱き合うのを、多分皆、冷静に見ていた。

静かになった京都ゴール裏。
これでいいのかも、と思った。
まだこのチームには早すぎる。
また伸びないといけない。

ただ、J2対戦との冷ややかな扱いに負けない、
勝ち負かしたJ1チームの選手、サポーターに恥じない、
レベルの高い試合ができたんだろうか。
「そう思うよ。」と言われて、ホッとした。


■試合が終わって

嬉しそうに雄叫びを上げているFC東京サポーター側に
敗者の紫の選手たちが向かったのが見えた。
そして、勝者である東京の選手も京都ゴール裏に挨拶に来る。
リーグ戦ではあり得ない、美しい光景。

そして、彼らが京都サポーターの前来た。
9年前、あのとき紫の選手たちは天皇杯を持って
子供のようにはしゃいでサポーターの前に帰って来た。
でも、今度は違う。敗戦の報告。

特に今期の「天皇杯全チームの得点王」の様子はおかしかった。
”高校生”ストライカーの久保にメディアの目が向けられているが、
この、新しい京都ユース育成システムの象徴、
サンガ4シーズン目の宮吉も、まだ19歳だった。
サポータの前で泣き崩れた。
京都コールが起こる。

  私は思っている。 
   J1とJ2を行ったり来たりのエレベーターチームなのは、
   今、若い選手が異常に多いのは、
   それでも、2回も天皇杯で決勝を経験できたというのは…

   実はそれは「クラブ」として
   まだ試行錯誤をしていることを意味すると思う
   借金を背負った選手補強、若者の育成。色々と闇雲にトライして、
   必要な経験、不要だったはずの経験をたくさん積み重ねたクラブ。
   だからサッカーの神様がちょっと感じて?
   時折「ご褒美」を与えてくれるのかな。

   でも、いまや「Scholar Athlete」という日本一の育成システムも。
   今年も若い選手が6人も下部組織から上がってくる。


   何より今日は、国立競技場をホームにできる幸せ、
   そして、元日に自分のクラブを応援できた幸せ。


帰路につく。
新幹線の中、そして北陸特急の中も、
珍しく京都サポーターは紫のユニホーム、
紫のマフラーを脱いでいなかった。

ちなみに、私も・・・そう。
まだ、この誇らしいマフラーを身につけていたいというのは。
14年サンガを応援して初めてかも。
なんかとても綺麗な色じゃない? こうしてみると。

   これがまた一つ、未来に続きますように。



雪がちらつく福井で、旦那が迎えてくれた。
「残念だったね。」
「うん。でも最高の元日だったよ。
 今度は世界で一番幸せなサポーターになる!」

えっと…トヨタカップとかっていつも日本であるの?
旦那は心配そうだった。




水谷 雄一 1 GK
加藤 弘堅 18 DF
安藤 淳 8 DF
森下 俊 3 DF
福村 貴幸 16 DF
チョン ウヨン 7 MF
中村 充孝 23 MF
工藤 浩平 20 MF
中山 博貴 15 MF
宮吉 拓実 13 FW
ドゥトラ 9 FW FW


守田 達弥 21 GK
下畠 翔吾 26 DF
内野 貴志 32 DF
中村 太亮 17 MF
駒井 善成 22 MF
金 成勇 28 FW
久保 裕也 31 FW



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