Kyoto Sanga Sketch Book
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2002年11月30日(土) |
【ジェフ市原戦 2nd 最終節】 〜Good luck!三つのたましい |
三人の選手がサンガを退団する。 一年前の昇格の原動力でありながら、若手にレギュラーを奪われたベテラン達。 彼らは全国的には有名ではない。が、心に残る味な選手。
長い選手生活、各チームでのほぼ全てを代表、元代表の控えとしてベンチで過ごし、 J2の短い瞬間、遅い輝きを放ったベテラン。GK中河(33歳)。
降格チームに流れ着いた二十代後半の選手。 去年J2で大活躍を見せた昇格の功労者。FW上野優作(29歳)。
そして、JFL時代から止めども無く選手が入れ替わるチームで 一人残りGK以外全てをこなした選手、ミスターサンガ。MF野口(30歳)。
最終節は好調な若手達をはずしてでも、 戦力外通告したこの三人を敢えて全員スタメンで使う、と事前に報道されていた。 建前は「彼らのスピリット(魂)を重視して」、らしい。
「ゲルトは何故勝負に行かない?」 確かに彼らは素晴らしい選手だろうが、スタメンなんてここ一年ろくに・・・。 勝てば総合5位になれるのに。ジェフは中西がいなくてもチェや優秀な若手達がいるのに。 だから始まる前はちょっと怒っていたり。
試合後に、あんな気持ちになるなんて想像もしないで。
■前半戦■
ゴール前はいつもの平井でなく、本当に今日で引退のGK中河が立っていた。 ゴールキックの度に顔を歪めていたのは、足の痛みの為。
前半5分 ジェフ崔龍洙 得点(PK)まだまだ!
そして前線も松井をはずし、昨年のようにFW優作がスタメンに入っていた。 彼を攻撃の中心に据え、サンガのパスはロングボール中心。 彼がレギュラーだった去年のJ2での戦術が復活(懐かしい)。
優作の気迫の入った姿はやっぱり美しい・・・んだよな。
ハッとする惜しいシュート、慎吾との相性も悪くない。 しかし次第に怪我した足を再び痛め、ついにベンチを見た。
彼が足をひきずりピッチを降りたのは前半27分。 ラインを出たとたん、ろくに歩く事さえできなくなった姿を見て、 今日どんなに無理をしていたか分かった。
もともと戦力外に納得いかない人は多かった。 (田原の加入がなければ・・・。) 私も含め、観客席は何人も涙を浮かべていた。
36分 黒部光昭 得点(アシスト:松井大輔)同点に。
そして中盤。中払をはずしMF野口さんも久々にフィールドにいた。 彼は今期ほとんどその姿を見せなかった正キャプテン。 2ヶ月以上もサテライトの試合さえ経験していないらしい・・・。 中盤にぽっかり空間ができる時間も時々あるけれど (^_^;
「グッさん、指令塔としての役割を期待されてるのかなぁ?大丈夫?」 「いいの。グッさんの今日のポジションは”キャプテン”だから(笑)。」
相手のファールに審判目掛けて走っていくキャプテンのグッさんが見えた。 今日はサンガでの最後の晴れ舞台。一分でも長くサンガの生きた歴史、彼をみたい。
■後半戦■
今期初出場のGKに背後を任し、今日もガンガン上がって行くサンガDF陣。 ジェフの攻撃陣も左右から揺さ振りをかけ、切り込んで来る。 次々飛ぶシュートに、中河の体も左右に飛ぶ。
彼は最後までボルトで支えた足首で好セーブを続けた。 燃え尽きてしまうかのように。
「安定しすぎていて平井君の時のように面白くない」という何とも言えない感想も(笑)。
63分 ジェフ 崔龍洙 得点 71分 サンガ 朴智星 得点(アシスト:冨田晋矢) 智星がこちらに向かって拳を突き上げた。歓声があがった!同点! 73分 松井大輔(アシスト:鈴木慎吾) 逆転!!
もはや打ち合いになった。残すところあと15分。 退団する三人のうち、ピッチに残っているのは中河だけになった時、 松井に加え中払もそろい、今年風サンガのダイナミックな波状攻撃がついに開始。
攻めて攻めて攻め続ける。でもジェフの守りは固く、この時間の得点はなし。
試合終了。サンガ3-2市原 三人を敢えて使った賭けは成功した。 「年間総合5位」のアナウンスに、小さく「おーっ」と一万人が低くどよめく。
■セレモニー■
最終戦セレモニーという事で、黒いベンチコートの選手達が場内を一周。 なぜか美尾君はチアガールに紛れて銀色のボンボンを振ってました。 (女の子のような彼だから違和感ない(笑))
メインもバック席もゴール裏も、 彼らの投げ入れるボールを争い、歓声が起きていた。
「京都サンガ!!!京都サンガ!!!」 ゴール裏の太鼓に合わせ、ご機嫌な田原が踊る。 ちょっと遅れて、サポーターの笑い声。
そして選手達は一礼後、何やら全員で私達ゴール裏のすぐ前で輪を作り出した。 一人の選手が捕まって中に入れられた時、やっと何が起きるかわかった。 彼の表情は固くこわばっていた、泣いていたかも(?)、
中河が宙に舞っていた。何度も。
それが終わると今度は選手の群れは、別の選手に詰め寄り始めた。 いいよ!俺はいいって!、と右手を振る今日のキャプテンの表情は必死。 でも、後ろから前から年下の選手達の不敵な笑みが。 肩にも何本もの手がかかって・・・
数秒後、サポーターの囃したてる声を浴びながら、 野口さんも宙に放り投げられていた(笑)。
解雇される選手に対して、初めてみる大きな感謝の表現が続いていた。 それは今までで一番美しいシーズン最終節の光景だった。
「彼らの魂が連続していけたら」そう思った。
今までサンガはちぎるように選手を捨て続けた。選手の方だって・・・。 だから何も続かなかった。
でも、今日は何故こんなに清々しいんだろう。 「スピリット(魂)を重視して」の起用と勝利は、「魂」を引き継ぐ場に変わっていった。 私の心にも。たぶん多くの人の心にも。
こうして祭りは終わり、選手たちが手を振りながらゴール前から去って行く。
でも一つだけ心残りが。 足を痛めて歩くことさえできない優作の姿がそこにはなかった事。 どこにいるんだろう。ベンチの向う?しばらくそこを見つめていた。
「燃えろ優作〜!オーレ!」サポーターのコールが聞こえた。 誰もいないピッチに松葉杖のベンチコートの長身の影が姿を現した。 痛々しくびっこを引きながら、こちらに、サポーターの元に歩いて来る。
白い紙で包まれた花束が、ゴール裏席を駆け降りて来た。 ファンの感謝の気持ちを束ねていくように。 色とりどりの花が、柵を超え、今、優作の指に触れた。
まだコールは続いていた。
2002年度京都パープルサンガ退団選手 ・上野優作(FW 29歳)J2アルビレックス新潟へ移籍 ・野口裕司(MF 30歳)J2大宮アルディージャへ移籍 ・中河昌彦(GK 33歳)引退。京都サンガジュニアユースGKコーチ就任
そしてその1ヶ月後。同じように宙を舞い、サンガを送り出された大切な選手。 ・朴智星 パクチソン(FW 21歳)オランダPSVへ移籍
新たな旅立ち。幸多きことを祈ります。 京都パープルサンガ 2002年J1リーグ総合5位
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