目が覚めたときには彼女はもういない その部屋に残るのは、僕と、1組の夜具と、それから
「おはよう」 「あ、おは、・・・おはようございます」
急に後ろから掛かる声に少し驚いて、何だかたどたどしい返事をしてしまう それを見て、彼女は微笑う
「そろそろ定例会が始まるよ、急ぎなさい」
朝と思えないほどの軽い足取りで僕を渡り障子に手を掛ける まだ寝惚けてぼうっとしている自分からすれば、まるで魔法のようだ
フ、と頬に添えられた手の冷たさに心がはねる 水を使ったのだろうか、なんてどうでもいいことが頭をめぐるのが 一瞬で打ち消されたのは同時に近づいた端整なつくりの顔と、彼女の声だった
「私は先に行くから、少ししたら出て自室にお戻り」 「は、はい」 「また、あとで・・・」
少しだけ、口付けの期待をした自分が恥ずかしい 手も、顔も、彼女の存在も、既に障子を隔てて外にある 冷たい指先からさらに熱を奪ったのか、 僕の頬は起きてすぐよりもほんのちょっとだけ熱を上げていた 目を開けてから5分あまり、僕はやっと目を覚ました、そして
(あの人の薫りがする)
彼女のいた跡を見ては、そんな幻想に浸るのだ
|