HIS AND HER LOG

2006年02月07日(火) 透明に帰す

目が覚めたときには彼女はもういない
その部屋に残るのは、僕と、1組の夜具と、それから



「おはよう」
「あ、おは、・・・おはようございます」

急に後ろから掛かる声に少し驚いて、何だかたどたどしい返事をしてしまう
それを見て、彼女は微笑う

「そろそろ定例会が始まるよ、急ぎなさい」

朝と思えないほどの軽い足取りで僕を渡り障子に手を掛ける
まだ寝惚けてぼうっとしている自分からすれば、まるで魔法のようだ

フ、と頬に添えられた手の冷たさに心がはねる
水を使ったのだろうか、なんてどうでもいいことが頭をめぐるのが
一瞬で打ち消されたのは同時に近づいた端整なつくりの顔と、彼女の声だった

「私は先に行くから、少ししたら出て自室にお戻り」
「は、はい」
「また、あとで・・・」

少しだけ、口付けの期待をした自分が恥ずかしい
手も、顔も、彼女の存在も、既に障子を隔てて外にある
冷たい指先からさらに熱を奪ったのか、
僕の頬は起きてすぐよりもほんのちょっとだけ熱を上げていた
目を開けてから5分あまり、僕はやっと目を覚ました、そして

(あの人の薫りがする)

彼女のいた跡を見ては、そんな幻想に浸るのだ


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ハチス [MAIL]

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