騙し絵が在って、それは貴婦人のようにも、魔女のようにも見えるのだと言う。貴婦人しか見えなくて、魔女なんて何処にもいなくて、言われてやっと気がついた。確かにそこにあるものが、今までそこになかったのだ。思い込みとは酷く恐ろしい。何も見えなくなってしまうのだから。それから離れられなくなってしまうのだから。 もしかしたら道なんて幾らもあるのかもしれない。ただ見えていないだけなのかもしれない。凝り固まった精神が、澱んだ視界が、それを阻んでいる。 見えないものを見ようとし、見えるものを見逃しているのだろうか。 自分が如何に馬鹿かということを知り、もしかしたら世の中金が全てじゃないかと思い、少なからず寝苦しかった夜。