2003年03月04日(火) |
今まででたった一人の文通相手2 |
前話:今まででたった一人の文通相手
交流会は終了の時刻を迎えようとしていた。
僕たちはそろそろ教室を出てバスに戻らなければならない。
・・・そうしていると彼女は、少し青ざめた顔で戻ってきた。
そういえば交流会の間中、顔色はよくなかった。
そして、椅子に座っている僕に向かって彼女は唐突に言った。
「手紙書きたいの。」
僕はすぐに意味が分からず彼女を見た。
彼女は続けて言った。
「あなたのアドレス教えてくれない?」
僕は彼女の目を見て言った。
「・・・うん、分かった。」
そして目の前にある紙にボールペンで日本の住所を書いた。
もちろんローマ字で。
「一応、キミのアドレスも教えといて。」
住所を書いた紙を渡しながら僕はそういった。
彼女はうなずいて、英語とハングルの両方の住所を書いてくれた・・・。
「もう戻れってさ。」
○川が僕に言った。
彼女が書いてくれた住所を僕はポケットに入れて、教室を出た。
彼女も後ろからついてきた。
そしていつのまにか横にいた。
「ネームプレート交換しようか?」
どちらが言ったのかはもう覚えていない。
そういえば、中学生の頃、付き合った子とはネームプレートを交換する儀式
みたいなのがあった。
僕はなんとなくそれを思い出していた。
彼女に対して恋愛感情を抱いているわけではなかったのだけど。
最後に握手をして別れた。
彼女は僕がバスに乗っても手を振ってくれていた。
僕も負けずに振り返した。
交流会はとてもイイ時間だったとそのとき思えた・・・。
・・・日本に帰って1ヶ月。
修学旅行の話題もだんだんのぼらなくなった頃、
僕はなんとなく彼女のことを想っていた。
そして、彼女からの手紙が届く気配は全く無かった・・・。
つづく
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