ゼロの視点
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2007年08月16日(木) 思い出のデパ地下

 小休止(?)といった形で、遠距離介護問題も私自身も、ひとまず落ち着いている昨今だが、妙に問題を背負い込んでいた《ケツの青い》日々には、色々なことがあった。ま、これからもいつ、どんなことがあるかわからないが・・・。とりあえず、振り返ってみた時に、いつも思い出されるのは、2005年10月、1ヵ月に渡って夫と一緒に実家で暮らしていた時のこと。

 夫と母は、言葉は双方で全く通じないけれど、意外に仲良くやっていた。ま、言い方をかえれば、私という存在によりかかりながら、いいところだけで、二人で楽しんでいるともいえるのだが。いざとなれば、母は私に日本語で話しかけ、夫はフランス語で話しかけてきて、問題を解決しようとするが、そんなことを同時にされても、私の頭がパンクするだけ・・・・。

 で、私がイラついてキツイ口調になったりすると、夫と母は2人して、《ゼロは性格が悪いね〜♪♪》と、目と目を見詰め合って私の悪口をいって、嬉々としていたりする。夫も、そういう日本語だけは、辞書でチェックしているので、母と声をそろえて言ったりすることができるのだ・・・・。

 さて、そんな3人が、用事を終えた、とある日の夕方、某デパートの地下にいた。デパ地下といえば、外国暮らしの長い人間にとったら、パラダイスっ!!!!。あんなもの、こんなものと、みるものすべてを口に放り込みたくなるほど、あらゆるものが美味しそう陳列されている。そして、そんな誘惑を目の前にしながら、現実的に、家の冷蔵庫に残っているものを思い出しながら、《今晩は何を食べて・・・、で、明日は何を・・・》等と、黙々と考えているのが私。

 ちなみに、3人で暮らしている間は、私が飯炊きばばあ。そして、夫と母は食べる人、というお気楽な身分。そして、母は私にむかって、オウムのように《今晩、どうするの ?》等と2分毎に同じ質問をしてくる・・・。ボケる前から、私にせっついた質問をしてくるのが母の常だったが、認知症になってからは、5分毎が2分弱毎になり、私がまたヒステリーを起こすには、時間の問題だった。

 一方、夫は、フランスには決してない、日本のデパ地下独特の、試食し放題天国に、激しく感動して、気がつくともう、どこかへ行ってしまっている・・・・。どいつもこいつもアテにならないヤツばかり・・・・。

 こんな状況にまた気が散って、なかなかメニューも決まらず、ますますイライラしていると、今度は、夫がいなくなったことを母が心配しだす。《ゼロちゃん、○○さんを探さないとっ !!!!》と、1分毎に私の耳元で囁く母。そんな私は爆発寸前。最後は私のジャケットの袖口を掴むようにして、母が執拗に囁くので、それを思いっきりフリほどくと、私が母を押し飛ばすようなカタチになってしまった。

 すると、この私の態度にカチンときたらしい母は、私の隙をついて、夫を探しに旅立ってしまった。私は空のカゴを持ったまましばし呆然・・・・・。《くそう・・・・・・・っ、あのじじいっに、このばばあ・・・っ、Merde!!!》。母をすぐにでも探そうと思ったが、もう、なるようになれと思い、後も追わなかった。それに、日本人の中から、ちょっと違った夫の姿を探すのは、母でもできるだろうと、完全放置。

 さて、その後、しばらくボーっと、私は粕漬けなどを吟味していたのだが、背後から、男女のはもった、それもとても大きな声で《ゼロ〜っ !!!!!》《ゼロちゃ〜んっ !!!!》と聞こえてくる・・・・・・・・・・・・・。



いやな予感・・・・・・。



 それらの声を、あくまでも私が無視していると、音量はますますヴォリュームアップされてくる・・・・・。そして、この声につられて、色々な人が、この奇妙な男女が見つめる先に存在するはずの 《ゼロちゃん》の姿を、興味津々で見ているのがわかる・・・。なぜなら、背中にたくさんの視線を感じるから・・・・(汗)。

 そして、嫌々ながら、般若のような顔で私が振り返ると、なんと、夫と母がそれぞれ、爪楊枝にささった餃子をまるごと両手にひとつずつ持って、私にむかって《これおいしいよ〜、ゼロちゃ〜ん》と、遠くから満面の笑顔&大声ですすめているではないか・・・・・・。餃子・・・・・、でも・・・・なんで、餃子・・・・?!?!?!?。それも、ひとり2個ずつ、キャンドルライトのように振るの、もう、やめろ〜っ、うぉぉぉぉおおっ!!!!!!!。で、アカの他人の方々、遠巻きに私のこと、眺めるのやめてぇぇぇえええっ!!!!。

 恐る恐る、2人に近寄っていくと、試食用の餃子は、ひとり半分ずつ。きっと、夫のガイジン面特権で、餃子まるごとゲットできたんだろうと推測・・・・・。そして、無邪気な認知症高齢者特権も加わって、最強タダ食いコンビとなっていた、夫と母・・・・、恐るべしっ。

 顔面蒼白の私は、2人がしきりに勧めてくる餃子を振り払い、バツの悪い思いをしていると、母のかかりつけ医院の看護婦が私たちに声をかけてくる。どうやら一部始終をみていたらしい彼女・・・(滝汗)。で、《楽しそうでいいじゃないっ、あなた達3人っ♪♪》と、彼女に言われ、私が《????》という顔をしていると、横から母がしゃしゃり出てきて《ね、そうでしょ〜、ゼロだけが、ひとり怒ってるのよ〜、いやあねぇ、ほんと、バカみたいね〜わはははは》と、看護婦に答え、2人して爆笑。そこに言葉のわからぬ夫までもまざり、笑っている・・・・。



 あの当時、本当に、恥かかされたとか、みっともないなど、怒り狂っていた私だったが、今思えば、なんと実にくだらなく、些細なことだったかと、実感・・・・。簡単にいえば、余裕がなかったんだろうとしか思えない。もちろん、ネタにする余裕もなし。

 ここまで、余裕がない自分というのも、久しいと思うと同時に、今だったら、一緒に図々しくも餃子食べて、笑ってただろうと思うゼロでした〜♪♪。


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