ゼロの視点
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2004年07月26日(月) 丸尾な世界

 夫が、パリプラージュ(セーヌ川沿いに夏の間だけ設けられたビーチもどきの場所)へ出向いて、そこで毎日行われている太極拳を見に行きたいと、会社から電話してきた。

 太極拳って普通午前中じゃないの?、と聞くと、“いや、夕方もやっているような予感がする”とのお返事・・・。私とすると、やってないような予感がするものの、ま、いいかと思い、18時半にシャトレで夫と待ち合わせして、行って見ることにした。

 この間までは一瞬、暑かったパリだったが、本日は非常に寒い。薄着でフラフラと出てきてしまった私は、“しまったっ!!”という感じ。なのに、パリ・プラージュでは、暑い日を設定し作られたスプリンクラーが無残にも作動しており、曇り空で肌寒い沿道に、人口の雨を降らせ続けている。

 ゆえに、そこを通る人は、嫌でもびしょぬれになる・・・・。ああ、たまんねーぜ。


 ようやく太極拳の場所に到着すると、予想通り午前中だったので、誰もいず・・・・。ほらね。自分でも、散々、太極拳を朝方にやる理由だのを説明しているのにねェ・・・、夫よ。

 ともかく、目的を失ったわしらは、そのままそこをブラブラし、ふいに思いついた友人Mへ電話してみる。運良くMがいたので、3人で一緒に映画でも行こうということになった。

 が、突然、今度はスプリンクラーではなく、本当の雨が激しく振り出し、ずぶ濡れになる。もう、この時点でかなりイライラしていた私は、ようやく落ち合ったMから差し出された傘の存在によって救われる。

 が、傘が夫の手に渡った。ま、オトコなら傘ぐらいもっててね、と思ったのがすべての間違い。3人で傘に入りながら、パリスコープを見て、今から観る映画選び。こんなことをしているうちに雨が小ぶりになったので、傘をたたもうとする夫。

 が、背後に人がいるなんてことを全く気にしない夫は、思い切り濡れまくった傘を後ろに下げる→そこにいた私に直撃→私、ずぶ濡れ・・・、ということになり、夫とひと悶着(怒)。

 あわや、また夫婦喧嘩か?、と思われる危うい雰囲気の中、Mがなんとか取り持って映画館に到着。未だに何を観るか決めてない私たちは、そのままとりあえずチケット購入のために、列に並ぶ。そして、ひょんなことから日本映画があったので、それを選んだ。


 フランス版タイトル“GOZU”、邦題『極道恐怖大劇場--牛頭--』(監督:三池崇史/2003年) だ。

 この映画について、まったく予備知識のない私たち3人。チケットを買う寸前にMが私に、“あんまり残酷で暴力的な映画は嫌いなんだけれど、ゼロどう思う?”と尋ねてきたので、“ヤクザ映画って書いてあるから、多少は暴力的なんじゃないの”等と、のんきな会話をしていた。

 私たちが映画館に入ったときには、すでに予告等が終わり、今、まさに本編が始まろうとする暗闇。空いている席を悠長に探す時間もなく、一番前の席に3人で座る。

 どんな映画なんだろうか・・・・・・・?!?!?!


 今やヤクザ映画には欠かせない俳優となっている、哀川翔のド・アップ(なんせ一番前の席なので)が続き、日本ではやっているはずのチワワ犬を、振り回しぶっ殺す。うーーーん、つかみはOK。

 と同時に、さっき“残酷で暴力的な映画は嫌い”と言っていたMの顔を覗き込む。いやあ、もう、いきなり、はじまっちゃったねェ・・・・、ふふふ。でも、私のせいじゃないよ、ひひひ。


 この映画は、私的には、本当にヒット中のヒット、いやホームランっ、ともいえるものだった。詳しくは書かないが、サドマゾ&エログロナンセンスな世界。丸尾末広等のマンガを思い出さずにはいられない。昨年、丸尾のマンガをゲットして、これを一字一句訳して夫に読ませておいてよかった。

 じゃなかったら、映画の途中で夫みずから“まるで丸尾の世界だね”なんて言葉は出てこなかったと思うからだ。やはり石の上にも3年(笑)、色々とコアな日本サブカルチャーを教えておくものだ、と自画自賛。


 すごいぞ、三池崇史!!


 後で調べたところによると、日本では劇場公開されず、レンタルオンリーとか・・・・・。ってことは、この映画を、大画面&一番前の席で観た、ってことはまずまずなのか?。

 予想外にも、Mが各シーンで爆笑している。そして、各シーンで驚いている。これだけでも、なかなか楽しめた。夫も、しかり。

 舞台は名古屋なのだが、度々繰り返される“あんた、名古屋の人じゃないね”というのが、ツボにはまる。日本中をロードムービーのように、何度も旅した旅に味わった感触。また、敢えて地元の人しか集わない閉鎖的な空間に、するりと入っていった時の感覚が蘇る。ああ、たまらないっ!!。これぞ、私の日本旅行の原点なのだから。

 映画館に入る前には、喧嘩寸前だったわしらも、知らぬ間に仲直りし、映画館を出た後は、3人で映画についての議論で盛り上がり、そのままクルド料理やに流れ込んで、実に楽しい晩となった。めでたし、めでたし。

 なにもかも“牛頭”のおかげです。ありがたや、ありがたや。
 


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