長渕剛 桜島ライブに行こう!



気持ち、上手に伝えられますか? (桜島ライブ26)

2004年09月24日(金)

『気持ち、上手に伝えられますか?』−桜島ライブ(26)

                 text  桜島”オール”内藤





溶岩グラウンドで足止めを食らう僕らをあざ笑うかのように、
上空を旋回し続けるヘリ。
ライブ中もやたらと飛びまわっていたあのヘリは、
いったい何をしていたのでしょうか。
DVDの撮影・・・か?


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M-15 LICENSE −アルバム『LICENSE』(1987)−



『勇次』で熱狂の渦となった桜島の上空を、
ヘリコプターが旋回し続けていました。

そのヘリが遠ざかって行くなか、
アコギから流れる安らかなメロディ。
繰り返し、繰り返し、循環コードが、
あのバラードのイントロを奏でていました。

『勇次』でピークに、そして、珠玉のバラード。
その豪華な連係に、
僕は第一部の終演を予感しました。

「もう、心臓、バクバク・・・」

と剛。

ほんとうに・・・
こんなオールナイトライブの序盤戦って、
あっていいものなのか?

僕がライブに通いはじめたころ、
剛は最後に必ず、そのときのアルバムの最後の曲、
バラードを切々と歌って、
「また会おう!」
と言い残して去って行きました。

そのときのムードをたたえた剛でした。
次が第一部最後の曲か・・・
僕は時計を見ました。
既に日付が変わっていました。

剛が、歌い始めたのは、
両親を羽田に迎えにいく前日、
走馬灯のように蘇ってきた幼いころの思い出を綴った、
自伝的内容の名曲バラード、

万感迫る『LICENSE』!


幼いころ 俺はいつも 海が好きだった
バラック小屋に 4人暮らしで
とても しあわせだった
むき出しのプロパンガス 
コールタールの壁
壊れかけた雨戸
夕暮れの背中 あの路地口で
いつも 
お袋は泣いてた



歌詞の中には、鹿児島の風景の気配がありました。
その鹿児島で聴いていると、
ノンフィクションの『LICENSE』がひしひしと迫ってくる。

「オー、オーオーオー・・・」

間奏は観客のコーラス。
コーラスに合わせて、
両手を上げ、左右に揺らす。

視界に入る、A−5ブロックの前方、
そこだけでも、とてもきれいでした。
僕は、両手を揺らしながら
うしろを振り向き、
7万5千人の両手が揺れるのを見ました。
おびただしい数の人間の手が、
向きを乱すことなく、
ひとつになって、左右に揺れていました。

こんなにも淡々とした語り口。
こんなにも抑揚のないメロディライン。
それでもなお、こんなにも、
『LICENSE』が情感をたたえているのは何故だろう。


取ったばかりのカーライセンス
あしたーーっ、
羽田に迎えにゆくーーーーっ!



ピンスポットの中、剛が絶叫。
沸き上がる歓声と拍手。

延々と続く、長い長いエンディングでした。
そして、剛のメッセージ。

「久しぶりにみんなと集まってみて、
 やっぱりこの街を、
 そしてキミたちを、
 愛していることを実感してる!」


ちょっと・・・
用意してきた感じのするメッセージでした。
そのためか、
僕の心はそれほど動かなかったような気がします。

「幼児虐待とか、
 子どもが母親を殺すニュースとか、
 俺にとっては絵空事にしか見えない。」


続いて剛の口からは、
最近の陰惨な事件を嘆く言葉が発せられていました。

「年を取って、ふるさとがいいと言う。
 俺はそうは思わない!」


なんだか・・・変だ・・・
ふるさとって、いいと思わないの、剛?

「10代、20代のみんなが、
 おふくろが、親父が好きだ!
 姉ちゃんが好きだ!
 弟が好きだ!
 これ、最高よ!」


部分部分で言っていることはわかるのですが、
少し流れがイマイチなMCでした。
そのため、剛が何を言いたいのかが、
今一つピンときませんでした。

高く両手を上げて、左右に振りながら、
この日、唯一、演奏中に友人と話をしました。

「いまのMC、ちょっと変だったよね?」

「えっ・・・うーん・・・」

「なんか、変じゃなかった?」

「家族と鹿児島は素晴らしいってことじゃないの?」

「そういう・・・こと?」

僕は、剛は少しMCでパニクったと思いました。
無理せず、思ったことを素直に言えば、
もっと自然なMCになるのに・・・
ここまでずっと上がりっぱなしだったテンションが、
すーっと沈んで行くのを僕は感じました。

絶好調だったライブ、
まさかの、失速。


これは、僕だけの、いや、僕と友人だけの、
単なる思い過ごしでしょうか。
今思い出しても、僕はそうとは思いません。
一見感動的なメッセージを送っているにも関わらず、
観客からのリアクションがそれほどでもなかったのは、
このときのMCのまずさがあったと思います。

そう思いつつも、そのあとも、延々と、
僕らは声を上げながら、両手を左右に振り続けました。
僕はなんだかひんやりした気持ちになっていました。
いまの剛のメッセージ、良くなかったなあ・・・
と思いながらも、従順に周囲に合わせている自分に。
僕は自分自身に対して、なぜだか悲しくなり、
そして、ほんの少しイライラしていました。

剛本人も、うまく気持ちを表現できなかったと、
内心、唇を噛み締める思いがあったと思いますが、
それよりも僕が気になったのは、
この剛らしからぬミスが起きた理由でした。

第一部が終わることで、気の緩みが出たのか?
それとも、なにか気になることがあって、
集中力が落ちたのか?

そんなことを悶々と思っているうちに、
長い、長い、『LICENSE』が終わり、

「すばらしいよ!」

と剛が言いました。

僕には、その言葉が、なんだか、
吐き捨てるような言い方に聞こえました・・・



P.S. 

「MUSIC PRESS」での桜島レポートでは、
『LICENSE』でのメッセージを、
 かなりうまく加工処理したものが掲載されています。

「幼児虐待とか、
子供が母親を殺すニュースとか、
俺にとってはまるで絵空事に思える毎日だけど、
若い皆が、父ちゃんや母ちゃん、
兄弟が大好きだと叫べる世の中であってほしいんだ。
歳を取ってから言うんじゃない。
若い皆がそう言えること、
それが最高なんだよ!」




<次回予告>
『LICENSE』で終わりではなかった第一部。
ゲストが集団で続々登場!
歓声と戸惑いが交錯するライブ、最初のエンディングへ・・・。

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