言霊
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2003年01月27日(月) |
◇ 敵いっこないじゃん |
ブラックジャックによろしくの4巻を読んだんだけど。 いやあ、もう泣きっぱなし(笑) 内容については、これから読む人のために伏せておくけどね。
結局ねー。 障害を持つことが大変なんじゃなくて、障害を受け止めることが何より大変なんだと思ってるのよ。 だから。障害児を持つこと自体が大変なんじゃなくて(もちろん次々と積もってくるものはあるけど)自分の子供が障害を持っているっていう現実を、自分が女であるとか人間であるとか日本人であるとか、そういう現実と同列に並べられるくらい自然に受け入れるのがね。 たとえば女に生まれれば、毎月一度は出血大サービスでしょ? 子供生む気はないとか言ってても、子宮を取ってまで楽になろうとは思わないでしょ、普通。 性同一性障害とかは言い出すとキリがないので、この場は省略。 女でなけりゃ、こんな人生は歩んでなかった。男だったら今の私はいない。 たぶんね。今の私よりつまんない奴になってたと思うよ。…クッ。出た、持病だ(爆笑)
マコリンが生まれた時の話をHPに書いてないことまで詳しくすると、病院側の痛い部分も見えてくるんだけど。それを話すとたいていの人が「もしかすると障害を持たずに生まれてきたかもしれないのに…っ」と、少し感情的になる。 まーねー。マコリン自身がそう言うんなら、それは一緒に口惜しがってあげるけど。 私を含めた「彼以外の誰か」が、それを言うのは…。 マコリンの母親としては「どーかな」ってのが正直な気持ち。 だって障害がないマコリンなんて知らないし。可能性はあったろうけど机上の空論だし。 ……そうだとしたら今のマコリンはいないわけだよ? もちろん今の私だっていない。 私はマコリンがマコリンだから、今の私になったんだから。
私はマコリンのお母さんになるまで、とっても固い人間だった。 なんでも自分でやれることが基本だと思ってた。 だから他人に迷惑をかけたり、手を煩わせたりするのが凄く苦手だった。 自分が「やってあげる」のはいいのにね。 誰かに「やってもらう」のは嫌だったのよ。勝手だよね。
マコリンは俗にいう「重度心身障害児」ってやつで。 特殊な椅子じゃなきゃ座位を取ることすらままならない。寝返りも打てない。具合が悪くなると呼吸すら介助が必要になったりする。たぶん言う人に言わせりゃあ「欠陥品」の頭と身体を持ってる男の子。 椅子に座るのも全介助。姿勢変えるのも全介助。食事もオムツも移動も当然、全介助。 それでも彼は確実に自分の武器を増やしてる。 数年前は泣くことも笑うこともできなかったハズなのに、いつの間にか笑顔一つで周りを動かしてる。それどころか幸せを与えてる。 与えられるだけの存在だなんて誰が決めたの? 自分の身体が動かせる私達は、誰かを幸せな気分にしてあげることができるの? マコリンが幸せそうな顔をすると、周りで生きてる人間が幸せになる。 世界中の人間から否定されてるような気分になっても、マコリンの笑顔が私を肯定してくれる。 大丈夫。生きてる。 間違えたって、いつでもどこからでも始められる。 マコリンは生きてるだけで私の勇気だ。
目が見えない人は、耳や鼻や感覚が私達よりずーっと有能になるらしい。 耳が聞こえない人だって、足が動かない人だって。 私達がパッと見で「障害者」だと思ってる人達には、私達にはぜーんぜん敵わない武器があって。それを日々育てながら生きてる。 五体満足の私達がボーッと毎日を消費している間に、武器を研ぎ澄まして、懸命に生きてる。 敵いっこないじゃん。 手足に10キロのリストバンド付けて、アタリマエに生活してるようなもんだよ。 便利な身体で便利な生活をしてるヤツが、どう足掻いたって勝てっこない。 私もマコリンには一生勝てないと思う。 たかだか7歳の子供に、血気盛んな(笑)27歳の私が勝てないんだから。
何が言いたかったのって。 だからさ。マコリンは障害を持ってる今のマコリンがいい。 湖に落ちて「五体満足な真くん」とか「超秀才の真くん」とか女神様が出してきても、マコリンはあげない(※金の斧銀の斧) そんなふうに考えちゃった時、私の戦いは終わってたんだなーってコト。
自分が恋なんかしてなくても恋愛小説で泣いちゃうように。 自分が青春じゃなくても青臭い感傷に共感しちゃうように。 平和な時代に生きてても戦争の悲痛さに胸を痛めるように。 私の戦いではないけど。 一緒に悩んで、悔しくて、歯痒くて。 要するに、そこにある傷みに触れてしまったワケです。 なまじ見える部分があるだけに、妙にリアルだったりもするし(苦笑)まーいろいろ。
気が向いたら読んでみておくんなさい。 損はしないと思う。人の傷みを知ると、たぶん少し強くなるから。 どうしてか「頑張らなきゃ」って気持ちになるから。
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