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見舞い。 | 2005年08月12日(金) |
「……痴情のもつれ、ってやつ?」 「せめて愛情の証と言って欲しいね」 「や、ありえないだろ」 見舞いに来たはずの男は枕元でけらけらと下品な調子で大笑いしている。彼は、何処か冷たい印象を与えるらしい僕とは違って、深い笑い皺の目立つ人好きのする造作をしている。 だからと言ってここまで笑われればさすがに不快感を覚えるというものだ。 「もう帰っていいよ君。ていうか二度と来るな」 「やー、はるばる山を越えて見舞いに来た親友に対して冷たくないかそれは」 抗議をする間にも彼は引きつったような笑い声を断続的に上げている。 「……過去の悪行、君の可愛い奥さんにばらしてもいいんだけどね?」 「うっわ本当酷ェ! 鬼! 浮気がバレて刺された男に告げ口される謂れはねェよッ!」 「――君が帰ったらさっそく奥さん宛に手紙を書こうか。さて、どれから知らせて欲しい?」 ひゃあと情けない声を上げて彼は僕に縋りついた。彼女に抱きつかれるなら嬉しいが男相手は暑ッ苦しくて耐えられたものじゃない。 「待ってマジ勘弁! な! 俺たち親友だろ!」 「どうでもいいが背中を叩くのはやめてくれないか。――傷が開く」 「あ、悪ィ」 ぱっと手を離す。日頃からうざったい男だとは思っているが、長所を認めるにやぶさかではない。素直さは僕にない彼の美点のひとつだろう。 胴に包帯を巻いている僕をまじまじと眺めて、彼はしきりに頷いている。 「……何」 「んー? 傷の治り遅くなったなと思って」 「……そういえばそうだね、随分長引いている」 以前の僕ならきっとこの程度、七日もかからず完治していただろう。 しかしこの怪我を負ってから既に十日。――呪いは確実に弱まってきている。 「普通の人間に戻る日も近いかな。良かったじゃん」 「ああ」 真白い包帯を見下ろす。 しみじみと感慨にふけっていると、すっと襖が開いて彼女が顔を出した。 「えぇと、頂いた西瓜切り分けてみたんですけどいかがですか? どうせふたりだけじゃ食べ切れませんし」 「うっわありがとーやっぱこいつには勿体ないなァ。何ならもっとイイ男紹介するよ?」 この手の軽口に慣れない彼女は、苦笑を浮かべて「ごゆっくりどうぞ」とだけ言い残すと早々に退席してしまった。 「……そんなに睨むなよ」 「別に睨んでない」 ****** 落ちないまま強制終了(……)。 77題60番、 プロットもなしの一発書きなので設定が色々とぼろぼろです(ていうか大抵短編はそんな感じ)(……)(Aquariumと蒼の向こう側は部活に提出しただけあってさすがに事前に道筋くらいは立てていましたが)。 |