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びっくりだ。
いつからショートショート週間になったのか。 それも、私はあゆの作品をパロ化し、るるは嫁姑バージョンにしろと 任命されている。 いや〜ほんとびっくりした。 あ、あんまりびっくりしたので名乗るのを忘れてた。 こんばんわ。紀香です。 あ、慌ててしまって本名を書いてしまった。 それにしてもあゆはいいんだろうか。 自分が書いたあんなに綺麗な作品を私やるるの手によって見るも無残な姿に変えられてしまっても構わないのだろうか。 愛着というものはないのか。 ないらしい。 ないからこそ、「頼んだぜっ!」などというノー天気なことが言えるのだろう。 それにしてもなぁ。頼まれてもなぁ。 困るんだけどねぇ。 いえね、書けと言われりゃ書くよ。そりゃいくらでも。 でもさ、あの『静心なく花の散るらむ』は私もすごく好きだったんだよね。 あ、あの歌知ってますか? あれは『久方の光のどけき春の日に 静心なく花の散るらむ』というもので、のどかな春の日でも、桜の花びらは静かに散っていくという、桜の木の物悲しさを謳ったものだ。 多分あゆは、桜と主人公の女性の悲恋を掛け合わせたのだろうが、それが跡形もなく歪曲されることになるだろう。 ま、それでも当の本人が楽しみにしているらしいので、そこらへんは原作者の了承を得たということで、 心置きなく思いっきり変えちゃおうかな。 あ、関係ないけど、あゆ。 「楽しみだにゃんにゃん」はやめとけ。 これを読むに当たっての注意事項としては、とにかく原作を何度も何度も読んでもらうことだ。 ------------------------------------------------------------ 『静心なく鼻の膨らむ』 どういうつもりで日曜日にこんなところに呼び出したんだ。 男は風呂の中でつぶやいた。 そして山本工務店と書かれたタオルに石鹸をつけながら、隣で洗ってる女の腹を見た。 三段腹・・・ いや、五段はあるだろう。段田段。 今まで女が待ち合わせの場所を指定したことはほとんどなかった。 一番最初の待ち合わせは渋谷のモアイ像の前だった。 あの時は確かモアイを女と間違えて話しかけてしまった。 二回目は上野の西郷隆盛像の前だった。 あの時も間違えて西郷どんに話しかけていた。 三回目は鎌倉の大仏の前だった。 今度は無事に間違えずにすんだ。 大仏が女のかげに隠れて全く見えなかったからだ。 それにしても、いったい今日の女はどういうつもりなんだろう。 今まで一度も会ったことのない休日を選ぶなんて。 今時の女には珍しく何かを男に求めるわけでもなく、 わがままを言うでもない音無美紀子だ。違った。おとなしい女なのに。 男が身体を洗ってると、湯船につかっていた女の尻のあたりからプカプカと小さい気泡が浮かんできた。 それを見つめながら男はぼんやり思った。 男にとっては都合のいい女だが、 女にとっては25歳から60年間というのは長すぎたのかもしれない。 今も生きてることじたいが不思議だ。 そろそろ潮時なのだろうか。 だが、男からそれを言い出すのは少しためらわれた。 宍戸錠が移って、頬が膨らんでしまったということは否定できない事実であるし、 男が女をブンブン振り回しすぎてしまったために、 女の三半規管に異常をきたしたことに対する申し訳なさもあった。 女の方からそれを言わせるのは無理だろう・・・。 突然、女が湯船から立ち上がり、こっちを見て微笑んでいる。 お湯が三分の一の量になった。笑ってる場合じゃないだろう。 次に入る男のこと考えろよ。 女の微笑みがやわらかな水の輝きに反射して、やけに新鮮に眩しく感じられた。 やはり、まだ手放したくない。 男は山本工務店と書かれたタオルをそっと女に差しのべた。 *********************************************** 「たまにはこんな時間にこういう所で会うのもいいよな」 女はせわしなく山本工務店と書かれたタオルを股ごしにパンパンとはたいてる男の言葉の中に嘘があることを容易に見抜いてる。 今までの時間をすべて男のせいにするほど、女はもう若くはなかった。 男のせいにしなくても若くはなかった。 誰がなんといおうと若くはなかった。 かといってやり直しができない年でもないと自分では思っている。 だが、多分無理だろうと周りの人は思っている。 日曜日の昼間、風呂屋で会いたいと女が言ったのは賭けだった。 毎週、馬に賭けてる分を今日は男に賭けてみた。 男がどんな言い訳をして家を出て来たのかは、 女には関係のないことだった。 しかしとりあえず女の誘いに男が応じたことが、却って女の決心を鈍らせている。 「お湯が少なくなってしまったね」 そう言い放った男の言葉をはずみにして、女はまた湯船につかり、 用意していた言葉を涙に隠してつぶやいてみる。 「これでまた一杯になったわよ」 女は、一瞬男の目に安藤の色が浮かんだのを見逃さなかった。 そこで女の賭けは終わった。 男は今まで佐藤と名乗っていたのに、やっぱり本名は安藤だったことを知った。 女は男の差しのべたタオルで男の背中を洗おうとして、ふと呟いた。 「もう泡ないわ。」 ボディーソープを追加しようとした女だったが、何を勘違いしたのか男はそのまま風呂場から立ち去った。 女は慌てて追いかけようとしたが、足がもつれて転倒した。 男は振り返ることもなくそのまま脱衣所まで進み、念願だったフルーツ牛乳を裸で腰に手を当てながら旨そうに飲んでいた。 ゴクゴクゴクゴクと・・・。 了 ------------------------------------------------------------ いいのか。本当に。これで。
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