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2003年11月29日(土) ■ |
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『二都物語』 |
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今月の読書会の課題本であるディケンズの『二都物語』の下巻にやっと入った。自分で選んでおきながら情けないが、どうにも進まないのだ。でも、下巻の巻末にある中野好夫さんの解説を読んでびっくり!巻末の解説は、だいたいがその作品を誉めるものだが、中野さん、全然誉めてない。「ディケンズは、こうした構成を考えたものはダメである」とはっきり言っている。いや、もっとひどいことも書いてある。「なにせ不得意の芸は仕方がない」ということらしい。なるほど、これじゃ私が先に進まないのも納得。
今のところ、ディケンズよりも中野さんのほうを信用しているから、中野さんはけしてこれが駄作だと言っているわけではないのだが、私の中では、すっかり「これは駄作である」という評価になってしまった。もっとも、この『二都物語』の訳がいいかどうかは、また別の話だが。やはり訳すほうでも、その作品に惚れていないと力が出し切れないのかもしれない。サマセット・モームなどの作品の翻訳に比べたら、どうも中野さんらしくないような気がする。
でも「駄作である」と思ったら、かえってイギリス文学の大家という先入観がなくなって、気が楽になったかも。あとは集中して、猛スピードで読むだけ。ちなみに中野さんも、「よくもまあこんなものを教科書にして英語を教えたものだ」といいつつ、「面白いことはけっこう面白い、楽しい読み物である」と言っているから一応フォローはしているのだが、今更もう遅い。
さて後半は、結局1日というか、半日で読み終えてしまった。「駄作」であると思い込んでいたのは、一応撤回しないといけないだろう。前半あれだけ進まなかったのが嘘のように、一気に読めてしまった。結局ディケンズは、この部分を書きたかったのだろう。語り口が前半とは別人のように、テンポよく滑らかになっている。『大いなる遺産』を読んだときもそうだったが、ディケンズは、会話が多い部分はどうもしっくりこない。しかし、ストーリーを展開させていく語り口は非常に面白いと思う。結局これもそうだった。中野さん曰く「部分的手腕には驚くべきものがある」という、そういう部分だ。
最後はハラハラ、ドキドキして、静かなところで一人で読んでいたら、涙さえ出たかもしれない。中野さんが書いている通り「面白いことはけっこう面白い」読み物だった。モーム流にいえば、余計な部分を削ってもっと短くすれば、名作になるだろう。って、すでに名作と言われてはいるのだけれど、これもまた、発表された時代のもたらした栄光であるらしい。フランス革命に対する歴史的興味や意義づけがようやく盛り上がりかかった時期であったからだ。
〓〓〓 BOOK
◆読了した本
『二都物語』(下)/チャールズ・ディケンズ カバーより パリに革命の火が燃え上がる。ルーシーと結ばれて幸せな生活を送るダーニーに、かつての忠実な召使いから救いを求める手紙が・・・。運命に導かれるようにフランスへ向い、捕らえられ、死刑の判決を下されるダーニー。刑執行の日、カートンは愛する人のために、彼女の夫の身代わりとなって自ら断頭台の人となる。大革命を挟む激動の時代を背景に描く、ディケンズの作品中最も名高い大作。
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