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2005年08月23日(火) ■ |
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ラピスラズリ(山尾悠子) |
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●読書中:ラピスラズリ(山尾悠子) 図書館にあったので借りてきて読み中。おもしろい。好きかも。 この作家ってその道の達人(?)にファンが多いわりに、まともなレビューが少ない気がする。私にとって「まともなレビュー」というのは、どんな本なのか中身が伝わってくる紹介のこと。例えばアマゾンのレビューみたいに「小説というものの可能性」とか「違う場、違う時間を感じさせてくれる」なんて高尚な精神論をぶたれると"なるほど、難しい本なのね"と思ってしまうし、肝心の話の内容はサッパリ伝わってこないんだよね、という意味。それじゃ私は「まともな」感想が書けるのか、というと難しそうだけどな。
内容はファンタジー。冬中を死んだように眠って過ごす人たちが出てくる。冬の間、屋敷の主人たちは眠って、使用人たちは起きている。・・・ムーミンみたいだな。と思ってたら、案の定眠っているべき真冬に眼が覚めてしまった女の子の話があって、『ムーミン谷の冬』だ! とか喜んでしまった。 (*8/24追記)【出版社ページの刊行インタビュー】で、「冬眠者のイメージはたぶんトーベ・ヤンソンですね」という記述を発見。おお、やっぱり!!
文章は普通に読みやすい。漢字が多めで、とても映像的な文章だと思った。冒頭で<人形狂いの奥方への使い><冬寝室><使用人の反乱>という3枚の絵が出て来るんだが、この絵の描写で話に引き込まれてしまった。読んでると、その絵が頭に浮かんでくる。
*<使用人の反乱>の描写部分…(前略)… 森の場面、秋の終わりであるらしい。葉をほとんど落とした広葉樹の深い木立ちと枯れ葉の海が繊細きわまるエッチングの描線で描き出され、その只中で時代衣装をつけた一群の登場人物たちがものがたりの一場面らしい大げさな身振りを示している。――荷車に積み上げられた十数人の男女の死体を、落ち葉の吹き溜まりに投げ捨てているところ、と最初わたしは思った。荷台に折り重なり、あるいは縁板から上半身を垂れ下がらせた男女のいずれもがぐったりと力なく眼を閉ざしているからだ。しかしそれらが死体であることを説明する傷や流血は描かれていない。 担ぎ下ろしては投げ捨てる作業に携わっている男たちは揃って召使のお仕着せか下働きの身なりをしており、反対に眼を閉ざした男女は古い時代の貴顕階級の盛装に身を凝らしている。ただそのフロックコートや結い上げた髪や裾の長いドレス姿のなかに、寝間着姿の者が何人か混じっているのはどういう意味なのかわからない。 …(後略)…
あとの感想は読み終わってから〜。
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