古館伊知郎「トーキングブルース16th」@パルコ劇場。
古館氏が一年に一度、16年間続けてきたソロのトークライブ。 私は以前に誘われて一度行ったきり(確かJanJanが無くなるときに記念でやったライブ)なのですが、今回急遽お声がかかりまして、行くことになりました。
パルコ劇場なんて久しぶり。二年前に「ヴァンプ・ショウ」観たとき以来でございます。 全国でやるライブなのですが、東京初日ということで花がすごい!ロビーに溢れんばかりの花。 しかもビッグネームばっかりですよ。 客層も普段のライブとは全然違います…おじさまなども多し。年齢層は高いです。
今回のテーマは、「恋してみました」。 ステージ上のセットは、黒いバックに「Talking Blues 16th」の小さなネオンサイン。その後ろに何故か網。 上手側の小さなテーブルの上に、ミネラルウォーター。 そのセットの前に古館氏が立って喋る、それ以外には全然装飾などなし。 それはそれはシンプルな、素材で勝負感ありありの(笑)ライブです。
二時間ちょいのライブですが、もちろんその間古館氏は喋りっぱなし。 基本的にはフリートークのカタチで、決め台詞(というか長い口上のような部分)のときはピンスポットが当たります。その間だけは彼の早口にぐーっと客席が引き込まれているのが分かります。
内容はねぇ…あんまりテーマと関係ない感じでした(笑)。 覚えてる限りでは、皆ストーリーを勝手に作り過ぎるという話・駒沢公園はすごいという話・なりきりで出会い系サイトに挑戦した話・古館氏の知り合いが言い間違いが酷いという話、など。
一番面白かったのは、出会い系サイトに挑戦した話ですかね。 今までPC方面に全然興味がなかったのに、「恋がしたい!」と思ってNECの一番いいパソコンを買って。 最初は男性として自分のありのままを書いてたそうなんですが、全然メールが来なくて、どんどん推敲していくうちに「女として書けばいいんだ!」ということになり…という話。 出会い系、面白そうねぇ(笑)。
ただ、タダで見といてなんですが(急遽代打だったのでチケ代いらないと言われたのさ)、このステージに自腹で6000円払うかと言われると…無理ですねぇ。 一人の男が、喋りだけで二時間持たせるのはすごい。 すごいけども… 喋ってる内容はそんなに面白いとは思わないんですよね、私は… 結構おじさんが好きそうな内容だとは思うけど。普通という感じです。 じゃあ皆彼の何を見に来てるのかなぁとつらつら考えていたんですけど、古館氏の話術なのかしら。 確かに噛まないですよ、二時間喋ってあんだけしか噛まなかったらホントすごいと思う。 しかしその「噛まない」という技術は、わざわざ劇場に足を運ぶほどの価値だろうか?
個人的に見ながらずーっと星野卓也氏のことが頭にチラついており(笑)、彼は最終的にはこういうのになりたいのかなぁとぼんやり思ってみたり。 ※私は星野氏結構好きなんですけどね
もともと古館氏は実況アナであって、「目の前にあるものをリアルタイムで巧みに表現する技法」が評価されてここまで来たわけで。 フリートークのライブとして、自分の用意した素材について喋ってもなぁ…彼のその技法を見せたことにはならないと思うのです。 となるとやっぱり実況するのが一番面白いのだろうか??うーん。 そもそも「実況」とは何ぞや。現実に目の前で起こった出来事を、即座に上手く伝える技術ですよね。 大勢の人が目撃した出来事を、一番最初に一番美しく言語化できるのが古館氏ということでしょう? となるとやっぱりトーキングブルースでやってることとは全然違う気が…
ずっと以前に夜中にトーキングブルースの歴史を辿るという番組を放送していて、それで観た過去のトーキングブルースはすごく面白かったんです。それは、今のフリートークのスタイルになる前。 もっとちゃんとコントとしても見られるようなカタチのステージで、私が一番面白いと思って見てたのは各テレビ局を相手に芸者風に例えていく…というものだったのです。 それは面白かった。 古館氏の「実況技法」の中の例えがすごく良かったわけで。 私がコント好きなのもあるでしょうけども。
最後のトークの部分で、16年間この「トーキングブルース」を続けてきたけども、来年からニュースステーションの司会をするので、今後はこういうカタチでライブは出来ないであろうという話をご本人がしてました。 一応カタチを変えて、続けていきたいというお話でしたが。
普段見ないタイプのステージを見られたことは大変よい体験だったのですが、自分が面白いと思うものと世間的に経済価値があるものとの隔たりを観たステージでした。 でもホントにプラチナチケットらしいです…うーん。すごいなぁ。 |