以前の日記にも書きましたが、現在、乙一を読破しようキャンペーン中です。 事の発端は、品庄軍で品川氏が「GOTH」をオススメしていたこと。 それ以前から、乙一氏の名前は知ってましたし、「このミステリがすごい!」で選ばれてたことも知ってたんですけど、実際に手に取ったことがなかったのですよ。 しかし品川氏があまりにオススメするので、じゃあ読んでみるかということに。
しかしこの「GOTH」に辿り着くまでが長かった(笑)。 図書館でリクエストしたものの、予約がいっぱいでなかなか周ってこなかったのですよ。それまでに乙一氏の他の本三冊ほど読んでしまいました。
ということで、やっと「GOTH」を読了しましたので感想など。 シリーズ物の短編が6本収められています。主人公は、高校生の男の子。一見普通の男の子で、周りとも適当に合わせられているけれども、心の中に暗い冷めた感情を抱いている彼が、クラスメイトの女の子といろんな悲惨な事件にまつわる体験をする…というのが大筋なんですが。 その主人公の事件への関わり方が、(品川氏も言ってましたが)正義感や良心という側面からではなく、もっと暗い死や残虐性への好奇心に突き動かされて…という、新しいタイプのお話だと思います。
6本のうち、私が好きなのは表題にもなってる「リストカット事件」(人間の手首だけを狩る犯人の話)と「土」(人を埋めたいという欲望に負けた犯人の話)でした。 犯人の動機もほとんど「欲望」のみなのですが、その欲望の味がすごく甘美に描かれていて、引っぱられます。 最後の「声」はものすごく引き込まれて、すごいスピードで読んでしまいました。読ませるスピード感がすごい。他の5本を読んでこその6本目なんですが、どの話もすごく伏線が効いてて、やられたよ…という感じです。
こりゃ「このミステリがすごい!」第2位に選ばれるわ、という面白さ。 ハードカバーしか出てないのでちょっと読みづらいかもしれませんが、ものすごくお薦めです。
ついでに、私が読んだ乙一氏の他の本(読んだ順)。
●「暗いところで待ち合わせ」→設定がすごく変わっていて、ありえないんですけどありそうな話。驚きは少ないと思いますけど、切ないお話です。人付き合いの苦手な人は読むと癒されるかもしれません。
●「夏と花火と私の死体」→これが氏のデビュー作。17歳ぐらいで書いたそうですけどものすごく新鮮です。主人公が死体なんですけど、その視点がすごいんです。ここでも残酷な子供が出てくるのですけど、ありそうな話で怖い。ちゃんとどんでん返しもあります。
●「石ノ目」→短編集で、世にいうライトノベルっぽい感じです。表題の「石ノ目」は特に。好きだったのは、お人形の物語「BLUE」。トイ・ストーリーみたいなお話ですが、子供部屋がおもちゃにとってどれだけ素敵な空間なのかの描き方に泣きそうでした。
●「死にぞこないの青」→これは結構残酷で好みの話ではなかったんですけど、これまた展開が気になってものすごいスピードで読んじゃいました。Kinkiの方の「人間・失格」みたいな話なんですけど(そうかぁ?)、後半がすごい。前半が読んでて苦しい。
という感じでした。 まだ読んでないのが他に五冊ほどあるのでそれを読むのが楽しみです。 電車で読んでると降りる駅が来ても乗り続けて読みたいぐらい。 こんなに一生懸命読んだ作家は久しぶりかも。 あとがきとかも面白いです。ものすごく文章が上手い。
完全におまけですが、乙一氏はネット上で日記をつけてるのですが、これも面白いです。上手な日記というのはこういうのを言うのだな。私の日記みたいにただ長いだけなのじゃなく(涙)。 |