戯言、もしくは、悪あがき。
散る散るミチル
ミチルは果てた
充電切れたら
今夜も寝逃げ

2008年11月10日(月) dadada

わたしたち何も一緒じゃなかった
だからダンスした
ダンスして抱き合った
手足がばたばたしておさまらなくて
痙攣
心臓が跳ね上がり
きみが雄たけびを上げる
わたしは笑いころげてしまう
知りたかったのは
皮膚を超えた向こう側で何が起きているのか
きみがほんとはどこにいるのか
きみの中にある幾すじもの道を
ひたすらに進んでいく一群が抱えていた
景色がいったい何だったのか
捕まえたくて足は地面を押し返す

たくさんのちいさなわたしと
たくさんのちいさなきみが
輪になって手をつないだ
赤かったり白かったり黒かったり
みつあみだったり坊主だったりちぢれてたりするわたしが口々に
歌をうたいながら踊ってる
手を取って
ほら
きみは
まるで高いところからやってきた
だれもしらないくにの使者
読めない手紙を戸口に挿して
音も立てずに去っていくみたいに
聞いたこともない旋律で
飛び立ちそうに眼を透き通らせて
ちいさなわたしの肩と肩に手を置いた
だからわたしは
いっそう強く手あしを揺らして
空気がふるえるのを
全力で受け止めるようにした
うまれるまえの
ほんのかすかな発熱が
まだ目に見えない隙間に残っているのを
思い出したから

もうなにひとつ
説明したくないの
楽譜だとか地図だとか辞書だとかレシピだとか
ぜんぶぜんぶ放り投げたあとに
まぶたに映った景色
それだけを携えて

だだひろい空を
飛行機雲が絶え間なく横切っては消えていく
みんな
通過して行くこの一点で
ダンスする
ようやく温まってきた指先でせいいっぱい
空を切り裂きながら
だれもみたこともないけれど
だれもが一目でそれだとわかるステップで

踊ったら
こどもたちがついてきた
たくさん
たくさん
みんなとてもきらきらとして
誇らしげだ
ばらばらの手足で
ばらばらのステップで
喉の奥から覚えたこともない音楽をこぼして
ただ
触りたかったの
ちいさなわたしがからだじゅうで
きみのダンスを祝福する
輪になって
手をつないで
なんて軽やかなんだろう
一番好きなステップを踏んでね
わたしは飽きるくらいおしりを振って
こどもたちがみんなそのあとに続いて
もう飛び立たずにはいられない

飛行機雲が消え続けている
あの窓からこちらを眺める瞳が
気づかないうちに濡れているのを
なにも知らないこどもたちの
まっすぐあげた雄たけびが
飛行機を貫いた
そのぽっかりとあいた点から
見知らぬだれかのこぼしたしずくが
ひかりみたいにふってきて
わたしときみと
わたしたちときみたちと
こどもたちの頭をきらきらとさせた
なんて
軽やかなんだろう
もうどこへでも行けるから
いっそう強く足を鳴らした
きみのてのひらが肩に触れて
いとしくて
ダンスした
ダンスして抱き合った
それから強くステップを踏んで
わたしたちはどこへでもたどりつける

まぶたに映った景色
なんてまぶしいんだろう
それだけを携えて
わたしは踊りつづける


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