たまたま立ち寄った雑貨屋さんで、金属で出来たゼンマイ仕掛けの虫のおもちゃを見つけて、無性にほしくなった。 そっけないんだけど、すごく愛らしくて、手持ち無沙汰なときに、ゼンマイを巻いて、床の上をどこまでも走らせたいなあとおもった。 結局買わなかったんだけど、家に帰ってから、やっぱり今度買いにいくぞと心に決めた。
進行方向と逆向きにネジを巻いて、いっぱい巻いて、それが反対側に戻っていく力で前に進むのって、なんかいいな。 しくみだなあとおもう。 わたしもそうやってぎりぎりぎりぎり反対側にきしんで、頑張って頑張って反対側に回って、それでもそれはやっぱり前に進む為のしくみなんだって。 それで巻いた分がなくなってしまったら立ち止まって、また巻いて。それが途切れて、また戻して。 そういうふうに力を生んでいけたら、それはそれでひとつのやり方だから。
あったかくなってきて、ちょっと嬉しい。 薄着の人を見ると、素敵だとおもう。 まとうものが少なくなるのは、それだけ、寄り道の幅が広がるような気がする。 いつでもどこにでもふらりといける。片手に上着を持って、それが邪魔になって途方に暮れることも無いんだ。
まだまだ朝は寒いけれど、夜の風も冷たいけれど、どんどん軽くなっていけたらいいなあ。 街中がわたしの道草を歓迎してくれてるって。 そんなふうにやさしくなれるといい。
|