青春に乗り遅れ(四) - 2003年08月04日(月) バーベキュー・パーティの翌朝、僕たち参加メンバーは、かなり遅くなってから起き上がってきたのは、いうまでもない。 僕たちの多くは、なにか近辺に観光に出かけるでもなく、だらだらと喋ったり、カードやボードのゲームをしたりして時間を過ごした。 そのうち、日も落ちてきたので、東京に帰ることになった。 大半の連中は箱根湯元までおりて、そこから小田急線に乗って帰るというコースを選んだ。 当時山手線の某駅近くに住んでいた僕も、その流れに加わった。 みんなスネかじりか、さもなくば薄給の勤め人だったので、ロマンスカーなんて高いものには乗らず、ふつうの列車に乗って、のんびりと帰って行った。 車中で話をしているうちに、Mさんは、僕と比較的近いエリア、それもふた駅となりという至近距離に住んでいることがわかった。 しかし、だからといって、同じグループの仲間であるという以外、まだ大した接点、趣味など大きな共通点もないMさんに、 「そうか、近所なんだ。今度一緒に、どこか遊びに行こうよ」 なんて気安い言葉が僕にかけられるわけもなかった。 「あと、何回かこういうパーティに出て、もう少し親しくなってからだよな、そんな誘いをかけるのは」 そう思って、その日はMさんに対し、何らかのアクションを起こすのは控えることにしたのである。 そのうち、いつのまにか、列車は終点の新宿駅へ到着してしまった。 Mさんは、比較的仲のいいらしい他の女の子ひとりと、新宿でショッピングをするらしく、 「じゃあ、おつかれさま」 という言葉とともに、新宿駅の雑踏の中に消えて行ってしまった。 そうして。 それきり、Mさんともしばらく会う機会がなくなってしまった。 適齢期の男女が多かったグループのメンバーが、その後続々と結婚して、それぞれが自分たちの生活で忙しくなってしまい、その後、パーティの類いは開かれることが稀になってしまったからだ。 たまに開かれたとしても、僕はさらに多忙な職場に移ってしまったので、まったく参加出来る余裕などなかったのである。 約2年後、とある結婚パーティの案内状が、僕のもとに届いた。 そこにはMさんが今度結婚する旨が書かれていた。 お相手は、僕と同業のH社に勤めるSさんというひとだった。 知り合ったのは、ここ一年くらいのようだった。 案内状には、やたらと「お似合いの美男美女」「オシャレなカップル」というような表現が躍っていて、読むのがいささか辛かった。 幸か不幸か、そのパーティの日は、多忙極まりない僕にとって出席出来ない日であった。 「欠席」に○をつけ、僕は出欠ハガキをポストに投函したのであった。 こうして、僕の淡い感情は、誰にも知られることなく、終わってしまった。 そして、他の恋も見つけられないまま、僕は28才を迎えようとしていた。 イベントにはなんとか、ギリギリで駆け込んで参加したつもりだったが…。 が、結局、僕は「青春に乗り遅れ」たままだったのだなと、この時、強く実感したのだった。 あのとき、少しでも声をかけてさえいれば…。 わが青春に大いに悔いあり、である(苦笑)。(この項・了) ...
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