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■キス・オブ・ファイアー。
2005年11月21日(月)
誕生日であった11月20日。トゥエンティ・ノヴェンバー。

特にこれといって変わったことをするわけでもなく、昼飯は
冷凍していた残り物のカレーだし、娘・R(2才)をいつも通り
公園に遊びに連れて行ったり、ぐずる息子・タク(1ヶ月)を
抱いてあやしていたりしただけだし、夕飯も嫁は

「今日は誕生日ディナーですよ!」

というわりにはただのスキヤキで、

「どこが誕生日ディナーなの?」

と聞いても

「うーん、『スキ』だから」

というわけの分からない答えが返ってきて理解できない平凡な
一日であった。僕も特に何をしたかったわけでもかったのだが、
ひとつだけ欲しいプレゼントがあった。

それはRのちゅー。

Rは嫁やピカチュウのぬいぐるみにはぶちゅぶちゅするくせに、
僕がいくらお願いしてもダメなのである。いつも巧みに逃げら
れてしまう。これってもしかすると

「お父さんお口くさーい」

というやつなのか…と真剣に悩んだりしたものだが、今日だけは
食い下がって娘の唇をゲットしようと直談判したのであった。

「Rちゃん、今日はパパの誕生日です」

「たんじょーびー」

「そう。だからパパおめでとーってチューしてくれ」

「ちゅー」

しかしRがちゅーしたのは僕ではなくアンパンマンの人形。

「アンパンマンじゃなくて、パパにだよー」

「えへへ、あんまん(アンパンマンのこと)、ちゅー」

このRの態度と表情は、照れているような、じらしているような、
そんなはにかみと意地悪っぽさが入ったような笑い顔であった。
それを見て僕は、これは決して本心から嫌がっているのではない!
じらして楽しんでいるのだ!そう確信した。

何故ならば、その表情は遠い昔、嫁を口説いた時の嫁の表情に
そっくりだからである。さすが親子。なればもう一押しである。
嫁と同じ口説き方をすれば落ちるはずである。

「なあー。先っちょだけでいいからしてよー」

…こんなことを言って嫁を落としたかどうかもう記憶が定かでは
なかったが、とにかく最後のお願いに来ました、という選挙活動の
政治家ばりの平身低頭ぶりで頼んだところ、

「ぱぱ、ちゅー」

なんと、Rが歩み寄ってしてくれたのであった。ああ、ついに…。
もう他にプレゼントはいらぬ。Rから毎年ちゅーしてもらえばいい。

将来Rに彼氏が出来てしまったら、彼氏と間接ちゅーになる恐れが
あるので、発見次第すぐ別れさせる所存である。

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今日もアリガトウゴザイマシタ。

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